将棋脳の研究者が見た「藤井聡太8冠」の凄さと3つの“脳力” 他棋士より活発な「脳内表現と局面理解」も

2023年10月11日 21:54

芸能

将棋脳の研究者が見た「藤井聡太8冠」の凄さと3つの“脳力” 他棋士より活発な「脳内表現と局面理解」も
大盤解説会であいさつにする藤井聡太8冠(撮影・須田 麻祐子) Photo By スポニチ
 将棋の藤井聡太王将(21)=竜王、名人、王位、叡王、棋王、棋聖含む7冠=が史上初めて全8タイトルを独占した。棋士の脳活動を研究し、自身もアマチュア初段の棋力を誇る東海大情報通信学部の講師、中谷裕教さん(50)は「藤井さんには、精度の高い直感、正確な読み、それらを支える知識という3つの強みがある」と分析する。
 将棋の世界は一手につき約80通りあり、次、また次と進むと数億通りの候補手が挙がる。中谷さんによると、プロ棋士の多くが子供の頃から修練を重ねることで「将棋のために使う特別な神経回路が脳内にできている」と解説。具体的には、目で見た盤面が後頭部近くの楔前部(けつぜんぶ)に伝わり、どんな状況かを脳内で表現し、局面を素早く理解する。そして、尾状核(びじょうかく)と呼ばれる部分の働きによって直感的に次の一手を導くというものだ。

 藤井の場合、楔前部が他の棋士より活発に働いている可能性がある。中谷さんは「藤井さんは数十手先まで読むことがある。これまでの知識に解釈を加えていろんな局面を理解し、正確に脳内で表現できていると考えられます」と解説。これが直感の土台となり、プロも驚く一手につながっていくという。

 ライバル棋士が「1分将棋でなぜあれほど間違わないのか」と舌を巻く勝負強さも際立つ。この点に関しては「新しい知識を脳が使いこなすことで正確な読みにつながり、たった1分でも指し手を決められる」とみる。

 AIソフトを使った研究は棋界の常識となっており「人間同士では気付かないような最新の知識を得られるようになった」と中谷さん。藤井が14歳でプロ入りした点に着目しており「若いうちからAIを駆使して人間には届かないような知識を上手に取り入れている。脳が柔らかいうちにプロになったことで成長曲線が高くなった」とした。

 新しい知識に適応する能力は「流動性知能」と呼ばれ、一般的には30代頃をピークに機能が低下していくとされる。「藤井さんはまだ21歳ですから。あと10年ぐらいは成長の余地を残していると言えます」と中谷さん。進化を続ける藤井の天下は当面続きそうだ。

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