中村七之助 友人・松本潤との初共演は「神様が用意してくれた巡り合わせ」
2023年10月22日 20:45
芸能
「現場に入れば2人ともスイッチが入って友人であることは忘れて対峙し、敵対する時は憎しみを込めたまなざしを彼に向けました。カットがかかればたわいない話をしました」
──松本さんに対してどんな思いがありますか?
「今から24年くらい前、私が16歳、17歳くらいの時、私の父が大河ドラマ『元禄繚乱』で大石内蔵助を演じ、私は大石主税役をやらせていただきました。その頃、松本潤少年と七之助少年は中野の堀越高校に通っていて、月曜日になると、2人は中野のバス停からNHKの西口玄関のバス停までバスで通い、私は大河のリハーサル、彼は別の番組の収録をしていました。それから24年たって彼が大河の主役をやり、私が石田三成という大役をやる。40歳を迎えた年に初共演する。神様が用意してくれたのではないかと思うくらいの凄い巡り合わせです。スタジオの雰囲気は『元禄繚乱』の時と変わっていないので、あそこに父がいたなあ…とか、父のことを尊敬してくれていた彼の今の姿を父が見たら喜ぶだろうな…とか、そんなことをスタジオで思いました」
──役者としての松本さんをどう見ていますか?
「現場で生で接して『立派な家康公だな』と思いました。この作品を最初からずっと見ていますが、今、第1回を見直したらどんな気持ちになるのかと思います。彼なりに計算し、いろんな人と相談もしながら、1年以上かけて家康公を作ってきたのでしょう。凄い吸収力と計算を感じます。それでいて現場では動物的に瞬時に心を動かして演じるところはさすがだなと思います。彼はいろんな経験を重ねて大きくなり素敵な役者になった。今回で一皮も二皮もむけたと思います。ファンの方々もびっくりしているのではないでしょうか。彼の初舞台の時、彼がセリフをかんで、お客さんが笑いました。それは嵐の松本潤がセリフをかんだ!という笑いで、私は許せなかった。作品のことはどうでも良く松本潤がそこにいればいいという人たちの前で芝居をするのはかなりきつかったと思います。でも、彼は自分の力でそこを切り開いていきた。いつか見ていろという思いで生きて来た。それがこの作品からにじみ出ていると思います」
──家康の逆境の少年時代、若い頃と重なる部分がありますか?
「それは違うと思います。彼は『どうする』なんて思っていなかった。そんな弱気じゃない。『どうしてやろうか』と思っていました。悔しい思いをして、ギラギラしていて、努力をして血の涙を流しながらやっていこうという人間でした」
──大河の座長としての松本さんをどう見ていますか?
「嵐で活動している時から、リーダーシップを取るのがうまいと感じていました。現場の士気を上げること、作品をどうしようかということを常に考えています。ただ自分の考えを押すのではなくスタッフの人たちの話も聞いて最善のものを出そうとしています。役者として共演したのは今回が初めてですが、真っすぐ突き進むところは私に似ていると思いました。それゆえに衝突もあるでしょうが、作品を少しでも素晴らしいものにしようという情熱は凄いと思います」
──今後の物語の展開で注目すべき点を教えてください。
「三成がどのように兵を挙げていくかというところに注目していただきたいです。三成と家康は戦なき世を目指すという同じ思いで戦乱の世を歩んでいました。それなのになぜ三成は未曽有の大戦を仕かけなくてはならなくなるのか。そこがポイントになると思います」
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。