猿之助被告“最長”執行猶予つき懲役3年 5年後舞台復帰へ、関係者「歌舞伎界に関わり続けることが重要」

2023年11月18日 05:00

芸能

猿之助被告“最長”執行猶予つき懲役3年 5年後舞台復帰へ、関係者「歌舞伎界に関わり続けることが重要」
市川猿之助被告 Photo By スポニチ
 両親に対する自殺ほう助の罪に問われた歌舞伎俳優の市川猿之助(本名喜熨斗=きのし=孝彦)被告(47)に対し東京地裁は17日、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。安永健次裁判長は「刑事責任は軽視できない」と厳しく指摘。執行猶予期間としては最長で、本人が希望する舞台復帰は5年後となる見通しだ。また、猿之助被告は判決後に直筆署名入りのコメントを発表した。
 猿之助被告は濃紺のスーツに紫のネクタイ、マスクを着用して入廷した。髪形は先月20日の初公判の時よりも短く整えられていた。開廷前はじっと目をつぶり、証言台の前に立つと、手を前に組んでやや背中を丸めた。判決要旨を聞く際は微動だにせず、席に戻るとやや安堵(あんど)したような表情を浮かべた。裁判官と検察官に頭を下げて退廷した。

 閉廷後には松竹を通じて「生かされた自分に、これから何ができるか考えていきます」などとコメント。罪と向き合いながら前向きに生きていく意思を表明した。

 今後について関係者は「裏方として歌舞伎界に関わりつつ、執行猶予が明け次第、舞台に復帰するのでは」と見通しを示した。初公判では本人が「再び舞台に立ちたい」と意欲を示していることが明らかになっており、松竹側も歌舞伎界屈指の集客力を誇る猿之助被告の復帰を望んでいる。

 ただ、執行猶予の長さとしては最長の5年が付いた。歌舞伎関係者は「歌舞伎俳優は毎日稽古をして毎日舞台に立ち続ける生活サイクル。体力的にも技術的にも5年のブランクがすぐに埋まるとは思えない」と復帰の難しさを指摘。その上で「だからこそ歌舞伎界に関わり続けることは本人にとっても重要。大道具、美術、演出補助など、名前が表に出ない形で関わることができる仕事はいくらでもある」と、猿之助被告が裏方として復帰への地ならしをしていくという。

 自死を図った後だけに私生活にも不安は残る。澤瀉屋(おもだかや)関係者によると、現在は、初公判で上申書を提出した弟子が中心となり、一門で猿之助被告の身の回りの世話をしているという。いとこの市川中車(57)や叔母ら親族のサポートも受けながら、復帰を目指していくことになる。

 松竹は17日、「(今後は)現時点ではまったく白紙」と見解を示したものの「(猿之助被告の)これまでの歌舞伎界への貢献に照らせば、本人をぜひ支えてまいりたい」と手厚いサポートを継続していくことを表明した。一方で所属事務所は同日、契約を解除した。

 世間の目は厳しく、5年後の歌舞伎界がどうなっているかは分からない。猿之助被告の復帰への道のりは決して平たんではない。


 ≪所属事務所が契約終了を発表、本人から申し出≫猿之助被告が所属する芸能事務所「ケイファクトリー」は、17日をもって契約を終了すると発表した。本人からの申し出があったという。「今回の事件が社会に及ぼした影響や、社会的責任等を鑑みるにマネジメントは難しいと判断した」と見解を説明。「市川猿之助については今後の人生を全うしてほしいという思いが私たちにもございます」とエールを送った。

 ≪刑事責任軽視することできず≫東京地裁は、量刑の理由について「犯行当時の思考が狭いものとなっていたとしても、犯行に至る経緯や動機に酌むべき事情が多いとは言えない」と指摘。多量の向精神薬をすりつぶしてコップに入れ水に溶かすなどして両親に手渡して服用させた点に関して「苦痛のない方法として選んだと述べていることを踏まえても、生命侵害への寄与の程度が高く、刑事責任は軽視することができない」とした。一方、猿之助被告が反省の態度を示し、関係者も更生を支援するとしていることなどを考慮したとした。
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