日比麻音子アナ　TBSでマルチに活躍　「徘徊に近い」散歩が支える等身大の日々

　【夢中論】TBSの日比麻音子アナウンサー（30）は、報道番組の司会からバラエティーの進行、ラジオに実況にグルメ番組…と、他に類を見ないほどマルチに活躍している。その多忙な毎日をリフレッシュするのが散歩の時間だ。一日にさまざまな仕事をこなす日も、空いた時間に歩いて頭をスッキリ。日比アナの日々は散歩が支えている。（伊藤　尚平） 　東京・赤坂のTBS本社で特番の収録を終えた夜。通勤用のスニーカーに履き替えて、駅には向かわずに街に向かう。電車に乗れば10分もかからない距離をゆっくりと歩く。テレビで多くの視聴者に見られている自分が、夜の街の中に溶け込むと、何者でもなくなる。そんな感覚が好きだ。

　「ウオーキングじゃないです。あくまで散歩。徘徊（はいかい）に近いですね。思うままにコースを決めず、いろんな場所を歩いてます。にぎやかなテレビ局からそのまま満員電車に乗ると気持ちが休まらなくて。少し歩いて電車に乗るとか、生活にグラデーションつけてます」

　週1回ほどのペースで、長い時は1、2時間。10キロ歩くこともあり、スマホのアプリを見ると2万歩以上ということもある。「仕事でアドレナリンが出てるとあまり疲れを感じない。でも、歩いてるとおのずと足は疲れる。疲れていることが実感できるから、その体感を大事にしてます」。多忙な時間を割いてのインタビューでも、笑顔は健康的だ。

　散歩を始めたのは早朝の情報番組「あさチャン！」に出演していた時。「午前1時入りで、番組が終わって昼寝しちゃうと明るい時間に活動ができなくて。モヤモヤしたときに“太陽浴びてないからかも”と思って」。今はリフレッシュ法に定着。好きな音楽を聴きながら歩く時間は「自分を取り戻す時間」。その日の気分、天気で聴きたい曲も変わる。

　「同じ場所を歩いても毎回発見がある。上を見ると“こんな店があったんだ”とか、下を見ると“なんか床が汚いな”とか。それって多分、仕事も一緒だと思って。どうしてもルーティンになってマンネリ化していく。発見や驚き、ワクワクを常に生活に取り入れたいと思っているので、それを散歩が気づかせてくれるんです」

　局の顔となりつつある。夕方の報道番組「Nスタ」のキャスター、情報番組「王様のブランチ」の進行、バラエティー「オオカミ少年」のアシスタント。女子駅伝の実況やラジオに、秋からはBS―TBSの人気番組「おんな酒場放浪記」も加わった。一日にジャンルの異なる番組を3本こなすことも。合間の時間には散歩をして頭をスッキリさせる。

　仕事が順調に進んでいる裏には「カッコつけなくなったこと」がある。一般的にイメージされる、きらびやかな“理想の女子アナ像”を追うのをやめた。元々そこへの憧れはなかったが、どこかで応えようとしていた。

　「オシャレな店でワイン飲んだりとかしなくなりましたね。オフの日はノーメーク。ファッションにうといし、ネイルもしないです。周りが考えるアナウンサー像に応える必要はなくて、自分がつくっていけばいいじゃんと思えるようになった」

　番組の現場でも女子アナらしさを求められると「どうしてそれをするんですか？」と聞く。「“女子アナと仕事をしてるんじゃなくて、私と仕事をしてるので考えてください”と言うと、スタッフさんと会話が生まれる。確かにそうだね、やめようか、ということもあるし、自分を出すことって大事なんだと思いました」。そのスタンスを貫いた結果、むしろ仕事は増えた。

　今年7月には、30歳になった。「ただ数字が増えただけ」と笑うが、責任感は年々強くなっている。「自分が自分が」と仕事を求めていたのが、今では「この番組は、私じゃなくて後輩の方が合う」と提案することもある。自分ではなく、番組に対して何が最善かを考えられるようになった。

　「それでもまだカッコつけちゃうこともあって、ヘコんだら散歩してますよ」。その散歩でまた、自分らしさを取り戻している。

　＜「Nスタ」メインキャスター＞4月から「Nスタ」に加入し、ホラン千秋（35）、井上貴博アナ（39）とともにメインキャスター（月、火、金曜を担当）を務めている。報道番組に出演する上で大事にしていることは「等身大でいること」という。「こんなこと思うのはカッコ悪いかなと思ってもまずは聞いてみる。視聴者にニュースが伝わることの架け橋になれれば」と話している。

　◇日比　麻音子（ひび・まおこ）1993年（平5）7月5日生まれ、東京都出身の30歳。青学大卒。16年にTBS入社。20年から「キングオブコント」のMCを浜田雅功（60）とともに務めている。TBSラジオでは「アフター6ジャンクション」の火曜日に出演中。お酒は何でも飲むがビール党。趣味は映画、音楽、美術館、高校演劇。1メートル57、血液型O。