元捜査一課刑事が警察を飛び出して行きついた場所 ボロボロになった大谷翔平ばり「夢ノート」を手に

2024年01月01日 17:00

芸能

元捜査一課刑事が警察を飛び出して行きついた場所 ボロボロになった大谷翔平ばり「夢ノート」を手に
佐々木成三氏 Photo By スポニチ
 元埼玉県警捜査一課で、現在はテレビ各局の情報番組などでコメンテーターとして引っ張りだこの佐々木成三氏(47)。芸能人顔負けのイケメンの元刑事として、SNSの危険性を訴えたり、身を守る啓蒙活動など活躍の場を広げている。第3回は、県警を退職する時に手にしていた、一冊のノートの中身を紹介。その驚きの内容と、今後の展開を聞いた。(取材・構成 松井 いつき)
 インタビュー中、佐々木氏がおもむろにカバンから取り出したのは、ボロボロになったノート。「『NARUZO(なるぞ)ノート』っていうんですが…刑事を辞めるときに自分が何をやりたいのかっていうのを全部書いたものです」。

 犯罪が起こらない環境を作るためには、より多くの人の防犯意識を上げるきっかけを作ることが重要だ。「どのようなアプローチが必要なのかをいろいろと考えました」。

 書きだしたのは刑事時代までさかのぼる。「刑事のときに自分がどういう思いで仕事してたのかっていうのが書いてあるんです。話さなければいけない環境を作ってあげるとか。否認している被疑者は、自分にメリットがあるから否認している。そこを口説くには(否認することに)メリットがないことをどうやって伝えるか、などなど…ちょっとすごいなと思ったのが、ここに『今後の展開』っていうのも書いているんです。知名度を上げなきゃダメだと思って、まず、知名度を上げるためにはどうすればいいのか。テレビ、ラジオに出て、知名度を上げたらセミナーの資料構築をして。人が興味を持つものを社員研修とかそういったものをやっていこうと」。すでにビジョンがあふれ出ていた。

 「できたら本の出版もしようと。根拠はなかったけれど、知っている出版社を書きだして。さらに知名度を上げるためにドラマの監修もやってみたいなと。恥ずかしいけれど、収入形態も計算していますね」と苦笑。それでも書いたことは現実となりつつある。今や事件が起きれば、情報番組で見ない日はない。ドラマの監修も手掛けた。さらにノートの内容を見た出版社から声がかかり、「刑事力(デカリョク)コミュニケーション 優位に立てる 20の術」を著した。

 同郷でもある大谷翔平投手が高校時代、目標設定するために書いたという「マンダラチャート」のようだ。「困った時に見ると、自分がぶれない。原点回帰できる」という。

 「警察を退職して外に出てみて、強く再認識させられたのが、多くの人は警察には大きな期待を寄せ、なんでも解決してくれるヒーローみたいな位置にあるということ。警察の不祥事事案には国民が強く関心を持ち、その行動や言動に注目しています。だからこそ、国民と警察のすれ違いができた時、間に入り、わかりやすいコメントをして、少しでも修正したいと思っています」。天職とさえ思った刑事の仕事を辞めて、表に出る仕事を選んだ。だからこそ、ノートを片手に、ぶれずに道を進もうとしている。

 講演活動では、中学生からの直筆の感想文に心揺さぶられた。普段はマイペースでポジティブ思考だが、小さなきっかけで突然崩れて絶望してしまうという男子学生。「佐々木さんのおかげで崩れた僕になった時の自分の直し方がわかりました。『問題の解決方法は無限にある』という言葉です。僕はこの後の人生で何度も佐々木さんの言葉に救われると思います」。防犯だけでなく、警察で得た問題の解決方法やマインド…若い世代に届いた瞬間だった。「読んだ瞬間、泣いちゃって。僕はこういう子を助けたいんだと。彼は学校の中ではとても優秀で、すごく無口な子らしいんです。とても緻密な子なんでしょうね。感動を伝えようとして、何回も消したり、一生懸命伝えようとしている。綺麗な文章よりも良いなって思うし、今も大事にしています」。

 一方、SNSを中心に広がる若者の世界を危惧する。社会問題化している「トー横キッズ」などは「同じ価値観の子たちの集まり。同じ社会観・価値観だから、オーバードーズとか、パパ活が広がるんです。みんながやってるから。SNSは横の価値観を広げるには長けているけれど、縦の価値観を作るには難しいツール。だから、トー横にはモラルがない。自分たちの価値観と違った社会観を持った人が入るからこそ、多様性が生まれ、コミュニティはできあがると思うんです。同じ価値観の人だけで固まるのはとても危険だし、人は悪い方に流されてしまう。トー横には、あの子たちを犯罪に利用する大人は多い」と警鐘を鳴らす。

 「トー横に集まる未成年を犯罪に利用しようと近づいてくる大人は本当に多い。彼らがそういった大人だけと付き合っていると、大人って信用できないという悪循環になってしまう。どうやって信頼のできる大人と縦の価値観でつながるのか。これは、情報モラルや今後の防犯意識を上げるためにも、すごく大切だと思っています。闇バイトもそうです。同じ価値観の人たちといると、俺もやりたいってなってくるんですよ。だから、違う価値観の人と一緒にいるって、実はすごく大事」。犯罪に手を染めないためには、人間関係の構築や人の見極め方を手助けすることが重要だと考えている。

 今、力を入れている「リアルケイドロ」も、コミュニケーション力を養ったり、ひいては町おこしにつながったりと注目されている。アプリを警察無線に見立て、被疑者役を追い詰めて捕まえるというイベント。県警時代に野球部を立ち上げた際、野球教室でのウォーミングアップ代わりに「ケイドロ」で遊ぶことを発案した。「本物の警察官に追いかけられるので、子どもがめちゃめちゃはしゃいでくれて。警察官20人と子ども100人でケイドロをしたんですが、子どもが野球しなくていいからケイドロしよう!って言ってくれるほどでした。共通言語というか、大人と子どもが一緒に遊べるっていいなって思って」。そんな警官時代の原点から生まれた。

 「子供って、知らない大人には声かけるなっていう教育が成り立っている以上、良い大人と悪い大人の見極めができないケースが多い。フォロワー数とか、見えているものだけで判断する。会話することが大事だと思うんです。『リアルケイドロ』で大人と子供が本気で遊んだりする中で、子供を守りたい大人がほとんどだということをわかってほしい。それを伝えたいっていうのが根底にあります」

 ノートに書き溜めてきたことが次々と叶う中、次は何を?「防犯のコミュニティを作りたいです。犯罪組織に対抗するには、防犯組織作ったらいいのではと。警察とは別に、こちらは防犯することを目的とした組織を作ってみたい」。警察を飛び出し、切り拓いてきた熱情で突き進んでいく。

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