北野武 パリ五輪ぶった斬り(2) 今後の日本開催は「世界的な詐欺にならなきゃいいと思うけどね」

2024年08月13日 05:00

芸能

北野武 パリ五輪ぶった斬り(2) 今後の日本開催は「世界的な詐欺にならなきゃいいと思うけどね」
記者の質問に答える北野武(撮影・木村 揚輔) Photo By スポニチ
 北野武監督が振り返るパリ五輪。セーヌ川で水泳が行われたトライアスロンでは、水質汚染で男子の開催日が延期に。レース後に体調不良を訴える選手も続出した。また、幻となった東京五輪の開会式の演出プランも明かした。
――トライアスロンが行われたセーヌ川の水質汚染も問題に。
 「汚ねえんだよ。だいたいフランスで香水がはやったのは風呂入んねえしクセえからって言われてるし、ハイヒールもウンコを踏まないようにかかとが高い靴を履くためって話もある。つまりさ、犬のフンを踏んでも大丈夫なようにしてる国。それでセーヌ川が奇麗になったって…なるわけないじゃん!ボラが浮いてる昔の隅田川でおいらに泳げって言ってるようなもんだよ。泳げただけで優勝だと思うもん。トライアスロンなんてそこを30分泳いでゲロ吐かなかったら優勝でしょ。それって、もうお笑いウルトラクイズ(※1)だよね(笑い)」

 ※1 1989年から放送された日本テレビのクイズ番組。たけしが司会を務め、爆破やカースタントなど過激な企画に挑むたけし軍団や若手芸人のリアクションが人気を博した。

 ――開会式も入場行進はなく、選手団がセーヌ川に船で登場。
 「だいたいさ、選手団がセーヌ川に現れたけど、どこの国か分かりゃしない。船の色をちゃんと国旗の色とかに塗り分けないと。金使わねえために借りてきた船でやってるからだろうね。あそこにソマリアの海賊がいても分かりゃしないよ。それで、本当に演出するなら、ちゃんと上陸地点を終点にしないと。川から直接会場に入って来るならいいよ。だけど、どこかで選手を降ろして会場に来るんでしょ。そういうとこはカメラに映さないで。それで、途中にショーをやって、レディー・ガガやセリーヌ・ディオンが歌ってる。日本でいえば(韓国の歌手)チョー・ヨンピルが歌ってBTSが踊るようなもん。国別だって言ってる割には、なんだそれって思うよね。ガガだってイタリア系と言ったって米国人じゃない。フランスに関係あんのって思うよ」

 ――もし開会式の演出をやるなら。
 「22年の北京冬季五輪まで3回ぐらい連続で、チャン・イーモウ(※2)とか映画監督の演出だったんだよね。東京五輪の時においらにも話が来たから企画書出したの。ゴジラが出てきて、ウルトラセブンに勝って、それから宇宙船が現れて、レーザーを出してゴジラをやっつける。その宇宙船が着陸したらパタッとドアが開いて、中から選手団が出てくるってね。選手は実際には地下から上がってくるんだけど、うまく宇宙船から出す形にって書いたんだけど。聖火もロボットの4人組が背負って走ってきて、階段に上って座ると、そのまま聖火台になってやるっていうの。全部絵まで描いてやったのに、あんな間抜けなオープニングになっちゃった」

 ※2 映画「紅いコーリャン」などで知られる。22年冬の北京五輪開会式では聖火のトーチを雪の結晶のオブジェ中央に置くと、“点火なし”でそのまま聖火台になる演出が話題に。

 ――北野監督の映画も愛されているフランス。国民性の印象は。
 「やっぱり個人主義。あとは結局、受け入れが凄いんだよね。だって芸術の街モンマルトルとかさ、そこでやってたピカソとかスペイン人でしょ。いろんな芸術家が出るけど、場所を与えてそこに来たらフランスの芸術なのかな。ガガだっていつの間にかフランスの文化として吸収しちゃうのかもね」

 ――選手村の食事も話題に。「肉が少ない」と憤る選手も。
 「農業国だからね。だけど、菜食主義と肉食とは全く別の話。動物でいうと、100メートル走るのは草食のヤギとかインパラじゃなくて、肉食のヒョウとかチーター。草食動物を狩って食べる動物でしょ。五輪選手って肉食の塊じゃねえか。なんで野菜食わせんだって感じはあるね。それで、コック呼んだりしてるんでしょ。そもそもエコにどうのこうのっていうの考えたら五輪なんかやらねえって」

 ――商業主義になりすぎという批判もある。
 「F1もサッカーも、みんなヨーロッパ貴族の銭もうけだよ。開催地ももうけようと思って種目を増やしちゃって。もう五輪はギリシャに返しゃいいんだよな」

 ――IOCは今後の日本開催にも前向き。
 「だましやすいんだと思うよ。それでバカみたいに金取られちゃって。この前の東京五輪は石原慎太郎元知事が経済効果3兆円とか言ったけど、どう考えても赤字じゃない。いろんなやつが五輪で一山当てようとIOCと組んで金かっぱらっただけでさ。結局は五輪自体が4年に1回、いかにして権力者が金稼ごうかっていうもの。世界的な詐欺にならなきゃいいと思うけどね」

 【取材後記】今回印象的だったのは「誤審」や「性別」を巡る問題に対する指摘だった。疑惑の判定が相次いだ柔道では選手側からのチャレンジが認められていない。一方で認められている競技もある。この「いいかげんさ」は性別の問題でも同様。国際ボクシング協会(IBA)の性別適格性検査の結果は採用しないのに「ドーピングにはうるさい」。判断基準の曖昧さを糾弾した。

 インタビューでは五輪に対する“毒”を吐き続けた。ただ開会式の演出を手掛ける意思があるか聞くと前向きだった。その“毒”の根底には愛があるように感じた。(映画担当・塩野 遥寿)

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