【チャンピオンズC】ケンタッキー90点、傾奇立ち
2017年11月28日 05:30
競馬
アポロケンタッキーはそんな希代の怪力馬を思い起こさせる鹿毛です。560キロ前後の馬格の中で最も際立つのが、サラブレッドとは思えない巨大なキ甲(首と背中の間の膨らみ)。馬はキ甲で重量を背負う。鎧(よろい)姿の前田慶次を乗せてもつぶれないでしょう。極端に太くて短い首、非常に発達した肩、大きな膝…。軽快さがない代わりに馬力にあふれています。冬場の乾燥したパサパサの砂も膝を曲げ、馬力任せにたぐれる前肢。ダート馬には前肢の発達した体形が多いとはいえ、極端なボリューム。重いソリを引くばんえい競馬の競走馬のようです。一方で、トモ(後肢)の筋肉は分厚く、トモのパワーを受ける飛節も特大。馬力とともに推進力も併せ持っています。
昨年のチャンピオンズCに比べて立ち姿も良くなっています。頭をしっかり上げて、とてもメリハリのついた立ち方。顔を見れば、いかついほどに顎が張っている。大食漢なのでしょう。全身が鎧のようにたくましい筋肉に覆われています。「常山紀談」に記された通りの「ふとくたくましき馬…鹿毛」です。実力馬が群雄割拠の戦国ダート決戦。乾燥した砂が舞台なら怪力ぶりを発揮する、21世紀の松風かもしれません。(NHK解説者)
◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日、東京生まれの73歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、美浦で開業。93〜03年に日本調教師会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。