わずか2年半で!菜七子 JRA女性騎手の最多勝利記録更新
2018年08月26日 05:30
競馬
「勝てたことは素直にうれしい。(レース中に)声援も聞こえていました」
この日の菜七子の6鞍目となった12R。鮮やかな圧逃劇だった。2番人気セイウンリリシイで6枠12番からロケットスタートを決め、一気にハナを奪う。道中でハイラップを刻みながらも、ペースは一向に衰えない。最後の直線も余力十分で後続を突き放し、4馬身差をつけてゴールを走り抜けた。
「強かったですね。ただ、ちょっとうまくいかなかった部分もあって…。どうしても前に行きたくて無理やり出してしまって、他の人に迷惑を掛けてしまった。そこは反省だし、凄く悔しい」
発走後の内斜行に、レース直後の菜七子は勝利の喜びを内に秘めた。
直近6勝(通算30〜35勝目まで)が全て逃げ切り勝利。地道に取り組む筋力トレーニングの成果もあるが、デビュー当初から光ったスタートセンスにさらなる磨きがかかっている。ゲートの中では繊細な女性らしく愛馬に声を掛けたり、たてがみを撫でる。「返し馬からゲートが開くまでは、馬を落ち着かせようとしている。馬が理解してくれているかどうかは分かりませんが、“落ち着いて、大丈夫だよ”と話し掛けていますね」。デビュー時から、希代の逃げ馬で08年有馬記念などG1・4勝のダイワスカーレットを最も好きな馬に挙げる菜七子。歴史的1勝は、憧れる女傑の得意スタイルで成し遂げた。
もちろん、騎乗技術も向上している。菜七子自身「どこもまだまだです」と前置きした上で、「その中でも最近は乗る姿勢が良くなって、ハマりが良くなったと言ってもらえるようになった。周囲からそう言ってもらえると、自信にもなります」と照れくさそうに話した。
通算35勝、年間15勝とも胸を張っていい。ただ、菜七子自身は“特別”なこと、ゴールだとは感じていない。「もっともっと勝っているジョッキーがいる」。ここから先はJRA女性騎手として、未到の道、蹄跡なき道を歩み続ける。菜七子にとって、この日が新たな、そして孤高の花となるためのスタートとなる。
◆藤田 菜七子(ふじた・ななこ)1997年(平9)8月9日生まれ、茨城県守谷市出身の21歳。16年3月5日、美浦・根本厩舎からJRAデビュー。同年4月10日の福島9Rサニーデイズで初勝利(51戦目)。JRA通算1047戦35勝(25日現在)。1メートル57、45キロ。血液型A。空手初段、剣道2段。趣味は寝ること、読書。愛読書は伊坂幸太郎氏の「マリアビートル」。好きな食べ物は肉、スイーツ。好きな歌手は、One Direction(ワン・ダイレクション)、俳優は三浦春馬。