【ウマ娘と名馬】常識破りの女帝 64年ぶり、7馬身差、宿敵と13分間に及ぶ写真判定…

2024年05月10日 12:00

競馬

【ウマ娘と名馬】常識破りの女帝 64年ぶり、7馬身差、宿敵と13分間に及ぶ写真判定…
「ウマ娘」サポートカード[うるさい監視役]ではウオッカ(手前)と宿命のライバルであるダイワスカーレットが描かれている(C)Cygames,Inc. Photo By 提供写真
 今、歴代の名馬に再びスポットライトが当たっている。クロスメディアコンテンツ「ウマ娘 プリティーダービー」が火付け役となった近年の競馬ブーム。スポニチアネックスでは、レジェンド騎手・武豊が「相当に詳しい」と舌を巻いたウマ娘の緻密なストーリー設定と、モチーフになった史実の共通点を読み解く新企画がスタート。第2回は今週末に行われる「ヴィクトリアマイル」を09年にレース史上最大着差7馬身差で圧勝した“常識破りの女帝”ウオッカを取り上げる。
 ウオッカは04年にカントリー牧場で生を受けたサラブレッド。父タニノギムレットも所有した谷水雄三オーナーに「ダービーを勝ったギムレットより強い(お酒の)方がいい」と、アルコール度数の高い蒸留酒から名付けられた。「水で割るより、ストレートの方が強い」と同オーナーが使用している冠名タニノは付されなかった。

 「ウマ娘」でのウオッカは「カッコよく生きることを第一に掲げ、どんな無謀な挑戦にも恐れずに突っ込む、生粋の挑戦者」。たしかに、競走馬ウオッカは蹄跡のない道を進み、勝つたびに常識を覆した。

 06年阪神JF=2歳レコード樹立

 07年日本ダービー=64年ぶり牝馬V(43年クリフジ以来)

 08年安田記念=14年ぶり牝馬V(94年ノースフライト以来)。3馬身半差はレース史上最大着差

 08年天皇賞・秋=コースレコード樹立。50年ぶり牝馬ワンツー

 09年ヴィクトリアマイル=レースレコード樹立。7馬身差はレース史上最大着差

 09年安田記念=牝馬史上初の連覇(92、93年ヤマニンゼファー以来史上2頭目)

 09年ジャパンC=日本調教馬の牝馬Vは史上初

 歴代最多(当時)7つの芝G1タイトルのうち、最初の勝利となった阪神JFでは圧倒的1番人気アストンマーチャンを退け、2歳女王に。勝ちタイム1分33秒1は、2歳芝マイルレコードを10年ぶりに更新。これが伝説の幕開けとなった。ちなみに、育成ウマ娘イベント「輝くボディに釘付け?」では、バイク好きのウオッカがバイク界の伝説に刻まれた超絶名機だという『JUV1331』をバイクショップで見つけ、虜になるシーンが描かれている。

 そして、2つめのG1タイトルはウオッカがウオッカたるゆえん、日本ダービー。牝馬の挑戦自体11年ぶり。桜花賞でダイワスカーレットの2着に敗れた後、牝馬の頂点を決めるオークスには登録すらせず、角居勝彦調教師は「常に何かに挑戦する姿勢を崩したくない。ワクワクする方を選んだ」(07年5月22日付スポニチ)とダービー参戦を決断。同日の紙面には競馬界OBや関係者の談話も掲載されており、陣営のチャレンジ精神は称賛しながらも、厳しい評価も見受けられた。実際に、ダービーの単勝オッズは桜花賞の1・4倍から10・5倍まで跳ね上がる。だが、角居調教師は「通用すると思っているから挑戦する」。四位洋文騎手は「チャンスのある馬で挑戦できる」。ディープインパクトも担当した西内壮装蹄師は「別格かも」と、直にウオッカに携わる人々には、この挑戦を無謀と捉えている者はいなかった。
結果は2着アサクサキングスに3馬身差をつけた圧勝。ウオッカは戦後初、64年ぶりとなる牝馬によるダービー制覇を成し遂げた。

 その後のウオッカも「カッコよく」我流を貫いた。ダービーのすぐ1カ月後には、年長の古馬に混じってグランプリ宝塚記念に出走。3歳馬はダービーが終われば夏休みがセオリーだが、谷水オーナーは「秋の凱旋門賞挑戦を考えればいい試練になる」(07年6月21日付スポニチ)と、あえて厳しい戦いにウオッカを送り出す。8着に敗れ史上初の3歳馬Vはならなかったが、負けて強くなる道程もまた「生粋の挑戦者」であるウオッカの魅力だった。

 G14勝目となった08年天皇賞・秋。宿命のライバルであるダイワスカーレットとの一騎打ちは今もなお伝説的に語り継がれている。同期の宿敵とのライバル関係は「ウマ娘」でも濃密に描かれている。実馬も互いに負けん気の強い性格で、ウオッカについては厩舎関係者の談話で「レース前になると“近づかないで”という雰囲気で蹴ってくる。オーラがビンビンに出てくる」(08年10月28日付スポニチ)と世紀の一戦を前に気が張りつめる同馬の様子を伝えている。

 1分57秒2のコースレコードでほぼ同時にゴール板に飛び込んだ2強のデッドヒートは13分間にも及ぶ写真判定が行われた。結果はウオッカに軍配。その鼻先が僅か2センチだけ前に出ていた。手綱を取った武豊騎手は「歴史的な名牝、というより名馬。エアグルーヴ同様、牝馬の枠を超えている」と興奮しきり。同年、牝馬としてはそのエアグルーヴ以来11年ぶりとなる年度代表馬に輝き、その翌年には牝馬初となる2年連続の年度代表馬に選出された。

 さて、「第19回ヴィクトリアマイル」が行われる5月12日、東京競馬場では第10競走に「ウオッカカップ」が組まれている。JRAウルトラプレミアムの対象のため、全投票法の払戻率を80%に設定した上で、全投票法の払戻金に売上げの5%相当額を上乗せして払戻が行われる。「その時々で心から走りてえレースだけを選んできた」(育成ウマ娘イベント『星屑のクロスロード』、ウオッカのセリフより)女帝の常識破りな馬生に思いをはせながら、今週もファンの皆さんには競馬を楽しんでもらいたい。

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