【パラリンピアン支える力】利益度外視で「本当のものづくり」
2016年09月10日 07:30
五輪
76年にバイク店を創業した石井重行氏(故人)が、84年4月にバイク試乗中の事故で脊椎を損傷。車いす生活となったが機能、デザインに納得できる車いすがなく、自ら製作したのが転業へのきっかけとなった。「本当のものづくり。いい物、格好いい物がつくりたい」という理念は、つくる物が変わっても不変。テニス男子で史上初の3連覇を目指す国枝慎吾(ユニクロ)を担当する技術者の結城智之氏(36)も、その理念に引かれて大卒後に務めていた造園会社から転職した。「車いすバスケ用の製造では寸法合わせの際、ユニホームを着てもらわないと、服装の厚みで乗れないことがある」というほどミリ単位の精密な作業を求められながらも、職人魂を発揮している。
現在、同社が力を注ぐのが、子供向けスポーツ用車いすの製造だ。川口氏が「車いすスポーツが高齢化している」と危惧するように、日本の主力選手の多くが30、40代。オーダーメードではない代わりに価格を抑え、10代から本格的にスポーツに取り組んでもらうのが狙いだ。創業者の石井重行氏は「未来を開発する。売れるからではなく、ものづくりで世の中を変えよう」と繰り返した。若い障がい者の未来も拓く。そんな気概は20年東京へとつながる。