女川“希望の1点”震災から7年、念願JFLデビュー
2018年03月12日 05:30
サッカー
圧倒的に試合を支配され、2点を先行された。それでも諦めない。後半8分、左サイド深くでFKを獲得。黒田が蹴ったボールに味方が詰め、その圧力もあってゴール右隅に吸い込まれた。「みんなで取った1点」。チームのJFL初得点を刻んだ黒田は胸を張る。技術、体格で劣ったが、誰一人諦めない。走力で上回り、最後まで追加点を狙った。
そのユニホームには、東日本大震災の経験が染み込んでいる。宮城県女川町は高さ最大約15メートルの津波にのみ込まれ、選手寮、クラブハウスが全壊。奇跡的に全員の無事が確認され、その多くが働いていた水産加工会社「高政」も被害を免れた。震災後から商品のかまぼこを生産し避難所へ届け、給水車で水を運んで回った。創設時の06年から所属するFW吉田圭(30)は「先が見えなかった。でも、誰も逃げようとしなかった」と振り返る。
支援活動に追われ、ボールを蹴る状況にはなかった。チームは活動休止となったが、住民の「サッカーをやってほしい」という願いを後押しに1年後に活動を再開。13年に東北社会人リーグ1部へ復帰し、今季ついに念願のJFLにたどり着いた。運命を変えた3・11から7年が経過。主将のMF成田星矢(31)は「このクラブが全国に知ってもらえた日。うれしく、誇りに思う日です」と言った。いつかJの舞台へ――。女川の夢は終わらない。
▽コバルトーレ女川 06年4月にスポーツを通じての町づくりを目指す「女川スポーツコミュニティー構想」に基づいて創設。同年から石巻市民リーグに参戦。11年に1年間活動休止。16、17年と東北社会人1部リーグを連覇。チーム名は女川の青い海(コバルトブルー)と自然豊かな森(フォーレ)を合わせたもの。全選手がアマチュア契約で、火〜土曜日の午後6時すぎから全体練習が行われる。
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