【レジェンズ・アイ】中村俊輔氏「真逆のサッカー…実行するのは難しい」 森保ジャパンに起きた奇跡と混乱
2022年11月29日 05:01
サッカー
その中で俊輔氏の目を引いたのが、「本当に強い、驚いた」というサウジアラビア。初戦でアルゼンチンを破る大金星を挙げた。「サウジのコンディションがかなり良かった。メッシがボールを持ったときは、激しくいっていた」。その言葉通り、絶対エースのメッシに対してマンマークをしなかったが、0―1の後半3分の同点弾は、メッシからボールを奪ってからの鋭い速攻から生まれている。
第2戦のポーランド戦は0―2で敗れたが、「ほとんどボールをキープしていた。完全にサウジのゲームだった」と俊輔氏。今回は初の中東開催で、「アジア勢は暑さとか湿度に慣れている。ファンも他の大陸より多い。日韓のときもそうだったけど、アジアでの開催は、欧州と雰囲気がかなり違うと思う」と、ジャイアントキリングが起こった要因に地の利もあったと指摘した。一方で、「アジア勢は日本を含めて(世界に)個で勝てないところを、グループでどうにかとか、俊敏性とか、献身性とかで補っていたけど、サウジは単純に個が強い」。FIFAランク51位のチームの技術の高さに驚いた。
中でも俊輔氏が絶賛した選手は、自国の強豪アルヒラルに所属するFWのS・ドサリ(31)と、MFカノ(28)の2人。日本では違いを生み出せる希少な存在として三笘の名前を挙げた上で、「欧州のトップレベルのチームでもできる」と断言した。
1次リーグ第2戦ではイランがウェールズに勝利し、オーストラリアもチュニジア相手に白星を飾った。とはいえ、俊輔氏は「これでアジアのレベルが上がったとは言えない。今大会だけでは分からない」という。実際、日本は初戦でドイツに歴史的大金星を挙げながら、第2戦で格下と目されたコスタリカにまさかの黒星を喫した。
では、森保ジャパンの戦いぶりは、俊輔氏にどう映っているのか。まずはドイツ戦。日本は一方的に支配された前半から一転、後半はシステムを変更し、攻撃的な選手を次々に投入して勝ち点3を奪った。「前後半でこうも違う展開になるのは、高校サッカーとかのレベルでもない。逆にW杯レベルだから起きるのかもしれないけど、W杯の凄さ、サッカーの奥深さを見せられた」。俊輔氏も奇跡の逆転劇に目を細めた。
勝因に関しては「(後半に)3―4―3のミラーゲームみたいになって、マークとか、スペースとかが明確になった」と、3バック変更が奏功したと指摘。4年間積み上げてきた戦い方ではなかったが、「奇跡をW杯で起こしたことは、選手も監督も凄い。W杯は短期決戦。勝つためにどうやるか。結果が全てだから、勝ったことは本当に素晴らしい」と、母国の勝利を手放しに喜んだ。
ただ喜びもつかの間、中3日で臨んだコスタリカ戦で敗れ、一転して窮地に。内容はドイツ戦と真逆でボールを支配したが、一発に泣いた。「ドイツ戦がボールを持てなかったから、真逆のサッカーをしなければいけなかった。それを想定して、いざピッチに立っても、なかなか実行するのは難しい」。俊輔氏いわく、初戦との戦い方の大きなギャップが、選手の感覚を微妙に狂わせたという。
実際、コスタリカ戦では「相手は5―4―1で完全に引いていたから、左右に揺さぶりたかったけど、球離れが遅くて、なかなかテンポが上がらず、向こうがしっかり(守備に)集中できてしまった」と、懸念していたことが起こった。
それでも、初戦で大金星を奪ったサウジアラビアも日本も、まだまだ1次リーグ突破の可能性を残している。俊輔氏は最後に、初の8強を目指す森保ジャパンに「スペインも本当に難しい相手だけど、結果がどうなっても、W杯を思いっきり楽しんでほしい」とエールを送った。
◇中村 俊輔(なかむら・しゅんすけ)1978年(昭53)6月24日生まれ、横浜市出身の44歳。97年に桐光学園から横浜M(当時)入り。02年7月にレジーナ(イタリア)移籍。05年7月に移籍したセルティック(スコットランド)で数々のタイトルを獲得。09年6月にエスパニョール(スペイン)に移籍し、10年2月に横浜復帰。17年から磐田でプレーし、19年7月にJ2横浜FCに加入した。00、13年にJ1でMVP。日本代表は98試合24得点。W杯は06、10年に2度出場した。1メートル78、71キロ。利き足は左。
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