体操ニッポン37年ぶり団体金!内村「やっと塗り替えられた」
2015年10月30日 05:30
体操
新黄金時代の到来だ。男子団体総合決勝で日本が、270・818点で78年ストラスブール大会以来、37年ぶりに金メダルを獲得した。世界大会では04年アテネ五輪以来の世界一。同五輪をテレビ観戦して団体に魅せられた内村航平(26=コナミスポーツク)は最終種目の鉄棒で落下したが、他の5種目で好演技を披露。体操ニッポンを頂点に導き、30日(日本時間31日)の個人総合で前人未到の6連覇に挑む。英国が270・345点で銀メダル、7連覇を狙った中国は269・959点で銅メダルだった。
チームメートとともに世界の頂にたどり着いても、キングの胸中は複雑だった。37年ぶりの世界選手権制覇、アテネ五輪以来の世界一。表彰式でどや顔を見せた内村だが、美学に反する勝ち方は納得できない。最終種目・鉄棒のアンカーで落下。完璧な演技で“栄光の架け橋”の着地につなげられず、「結果としては凄いうれしいけど、最後の鉄棒がなぁって思いしかない。獲った喜びよりも、あそこは決めなきゃいけない」と振り返った。
床運動、あん馬の序盤2種目で中国を突き放したが、田中が平行棒と鉄棒で落下。内村の鉄棒の開始直後、地元・英国が首位に浮上し、大歓声が起きた。G難度の離れ技を前にした重要な局面。「タイミング良く歓声が来たんでズレちゃったかな」。バーをつかみ損ね、マットに叩きつけられた。英国との点差は13・993点。「やばいでしょって思った。14点出るかなって」。スコアは14・466点。歓喜の輪の中心には内村がいた。
04年8月16日、冨田洋之さんの完璧な着地とともに戴冠した、アテネ五輪から4090日。団体世界一は、ずっと内村の悲願だった。過去、世界大会で団体5度の銀メダル。既に個人総合で無敵だった12年ロンドン五輪前、母・周子さんに「団体と個人、正直どっちが勝ちたいの?」と聞かれると即答した。「団体に決まっている。みんなで喜びたい」。常に個人よりも団体を優先してきたキングは、「ずっと2位だったんで、やっと塗り替えられた」と少し笑った。
美しい演技が窮地から救った。25日の予選の床運動で、宙返りからの飛び込み前転で頭を強打。致命的な首の負傷を周囲は心配したが、痛みは右肩に出た。内村のこの技は、見本として審判講習会の映像で使われるほど美しい。今井トレーナーは「普通は激突時に左右どちらかに首がねじれる」と言うが、内村は体の軸がブレず床に対して垂直に突っ込んだ。内村だから最小ダメージでとどまり、決勝は予選を0・967点上回る91・531点を叩き出した。
昨年、地元・中国に0・100点差で敗れたが、今年は地元・英国を0・473点差で振り切った。苦しんでつかんだ金メダルが、16年リオデジャネイロ、20年東京五輪、そして未来へとつながる。「僕はアテネで衝撃を受け、ここで金メダルが獲れた。東京(五輪)世代の子も衝撃を受けたと思う。20年より先も、日本が勝っていけるようにするのが課題」。かつて世界大会で10連覇した体操ニッポン。キングによって、新たな黄金時代の扉は開かれた。
▽内村の世界選手権金メダル 初の団体総合制覇で世界選手権の金メダルが通算8個に。監物永三と中山彰規を抜き、日本選手で単独最多。昨年、日本勢の単独最多となったメダル総数は17個(金8、銀5、銅4)に増えた。
▽栄光の架け橋 04年アテネ五輪団体決勝で日本は76年モントリオール五輪以来28年ぶりの団体金メダルを獲得。最終種目の鉄棒で最終演技者・冨田洋之が伸身の新月面の着地を決めた際に、NHKの刈屋富士雄アナウンサーが「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ」と絶叫。ゆずが歌ったNHKの五輪放送テーマソング「栄光の架橋」とかけた名実況となった。
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