シンクロ、3人で流した涙 地獄を乗り越え…日本に戻したメダル
2016年08月18日 05:30
アーティスティックスイミング
![シンクロ、3人で流した涙 地獄を乗り越え…日本に戻したメダル](/olympic/news/2016/08/18/jpeg/G20160818013188030_view.jpg)
デュエット決勝のフリールーティン(FR)が行われ、日本の乾友紀子(25=井村シンクロク)三井梨紗子(22=東京シンクロク)組が3位に入って日本勢2大会ぶりのメダルを獲得した。94・9333点をマークし、テクニカルルーティン(TR)との合計188・0547で銅メダルを手にした。正式種目となった84年ロサンゼルス五輪から、ソロやチームを含めて続いていた7大会連続表彰台は12年ロンドン五輪で途切れたが、14年に復帰した井村雅代監督(66)の下、お家芸復活への一歩を踏み出した。
演じた3分1秒のために一体どれだけの涙を流しただろうか。練習で手足がしびれ、食事が喉を通らない日も少なくなかった。地獄の日々を耐え抜いたのも、この瞬間を夢見てきたからだ。銅メダルが決まると、乾と三井は井村監督と抱き合い、3人で涙を流した。くしくも指揮官はこの日、66歳になった。乾は「1年前、今日が決勝と決まってから“絶対にプレゼントしたい”という気持ちがあった」という。初めて五輪決勝と重なった誕生日、2人にメダルをかけられた監督は「忘れられない誕生日になりました」と頬を濡らした。
チーム、デュエットとも5位に終わったロンドンで初めて五輪の表彰台を逃した。チーム要員の三井が「参加するだけの五輪だった」と言えば、デュエットでも出た乾は「目標を見失いそうになっていた」と振り返る。しかし14年春、日本と中国を指揮した五輪8大会全てでメダルを獲得していた井村氏が中国代表から復帰した。ミーティングで「指導を受けるなら覚悟しなさい」と宣言され、1日最長13時間にも及ぶ特訓が始まった。
1メートル70の乾と1メートル68の三井はシドニーとアテネの両五輪代表だった1メートル70の立花と1メートル65の武田を抜き、コンビでの身長が最も高い。ポテンシャルは高かったが、戦闘意欲が足りなかった。そんな2人を、エキサイトすると関係者も「任?映画みたい」と驚く井村監督が熱血指導。映像はスロー再生で少しのズレも妥協せず同調性を高めた。競泳メニューでは25メートルの潜水を間に挟むなど選手を低酸素状態に追い込み、直後に演技させる過酷ぶり。選手間の情報交換ではLINEの使用を禁じ、直接対話で意思疎通を図らせた。極限状態に乾はトイレで泣き崩れ、耐えかねた選手2人が15年冬に代表から離脱。三井は「限界の超え方を教わった」と振り返った。
努力は実を結び、15年世界選手権で8年ぶりにメダルを獲得すると、一方的な指導だった井村監督が「あんたらはどうなん?」と選手に質問して状態を確認するまで信頼関係が築かれた。当初は指揮官に「ゆるキャラの極み」と言われた選手が勝つ喜びを覚えて闘争心が芽生え、この日は2人がテーマの「風神雷神」を演じ切って鋭い足技と優れた同調性で魅了。銅メダルにつなげた。
乾は「思いがかなってうれしい」と喜び、三井は「(監督に)メダルをかけることができて本当にうれしかった」と達成感を漂わせた。アテネ五輪後に日本を離れ、北京とロンドンの両五輪で中国にメダルをもたらした井村監督は「メダルを日本へ戻してあげたい気持ちがあった」と振り返った。3人の思いが一つにシンクロし、復活への大きなうねりが生まれた。
◆井村 雅代(いむら・まさよ) 1950年(昭25)8月16日生まれ、大阪府出身の66歳。小学3年生で大阪府堺市の浜寺水練学校に入門。中学1年生でシンクロを始めた。天理大卒。78年から日本代表コーチ。シンクロが正式種目になった84年ロサンゼルス五輪から6大会連続メダル獲得に貢献し04年アテネ五輪を最後に退任。06年中国代表コーチに就任し08年北京五輪、12年ロンドン五輪で連続メダル獲得。13年英国代表コーチ。14年日本代表コーチ、15年同監督に就任。
◆乾 友紀子(いぬい・ゆきこ) 1990年(平2)12月4日、滋賀県近江八幡市生まれの25歳。小学1年からシンクロを開始。近江兄弟社高―立命大卒。12年ロンドン五輪では小林千紗と組んだデュエット、チームともに5位。昨年世界選手権は三井と組んだデュエットTRなど4種目で銅。1メートル70、56キロ。
◆三井 梨紗子(みつい・りさこ) 1993年(平5)9月23日、東京都新宿区生まれの22歳。小学3年からシンクロを開始。日大一高―日大卒。シンクロ日本代表最年少の18歳で出場した12年ロンドン五輪はチーム5位。昨年世界選手権では乾と組んだデュエットTRなど4種目で銅。1メートル68、57キロ。
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