追悼連載~「コービー激動の41年」その35 ジョーダンとの別れ
2020年03月22日 08:00
バスケット
![追悼連載~「コービー激動の41年」その35 ジョーダンとの別れ](/sports/news/2020/03/22/jpeg/20200321s00011061187000p_view.jpg)
それでもブライアントにとっては思い出に残るシーズンだったはず。なぜなら2003年はコービー・ブライアントにとって偉大な先輩に別れを告げる年だったからだ。その“レジェンド”は現役生活の晩年をウィザーズで過ごしていたマイケル・ジョーダン。ブライアントとジョーダンのNBA人生はわずかながら重なっていてジョーダンがブルズ時代に4回、2度の“引退”によるブランクをはさんで入団したウィザーズ時代にも4回、両者は対戦している。
最初の対決はブライアントがまだ新人だった1996年12月17日。場所はシカゴだった。129―123で試合に勝ったのはブルズで、ブライアントは9分48秒間の出場で5得点に終わった。ジョーダンは47分8秒で30得点。絶好調というわけではなく、フィールドゴール(FG)の成功は32本中10本のみで、精彩を欠いた部分は相棒のスコッティー・ピッペンが35得点を稼いで補っていた。
ブライアントが「対ジョーダン」の試合で存在感を示したのは1997年12月17日の3回目の対戦(シカゴ)だった。ベンチ・スタートながら29分6秒でチーム最多の33得点をマーク。ところが19歳の若者によほど負けたくなかったのか、34歳の先輩は34分41秒の出場でそれを上回る36得点をたたき出し、試合はブルズが104―83でレイカーズに快勝した。
ブライアントが同じ試合でジョーダンの得点を初めて上回ったのは、ジョーダンがウィザーズに在籍していた2002年2月12日にロサンゼルスで行われた5回目の対戦。39歳の誕生日を5日後に控えていたジョーダンは41分2秒で22得点、5リバウンド、6アシストと健闘を見せたのだが、23歳のブライアントは43分4秒で23得点、11リバウンド、15アシストでトリプルダブルを達成して103―94での勝利に貢献した。
2002年11月8日に7回目の対戦を終えたところで、試合ではブライアントの4勝3敗。個人の得点ではジョーダンの4勝3敗だった。
そして2003年に顔を合わせた2試合がこの2人にとって最後の対決となる。2003年の“第1戦”は、2月9日にジョージア州アトランタで開催されたオールスターゲーム。ジョーダンにとっては通算14回目の球宴であり、誰もが最後の夢舞台であるという認識を持っていた。試合は第3Qまで7点差をつけられていた西軍が第4Qに追いついて延長に突入。球宴でありながら途中からは今年同様にほぼ“ガチ”の勝負が繰り広げられていた。しかし同点で迎えた延長の残り4・8秒、東軍のジョーダンが右サイドからジャンプシュートを決めてスコアは138―136。この試合で27本中18本もシュートを外したジョーダンにとっては起死回生の1本で、私は「よし、これで原稿ができた」と喜んだものである。
ところが残り1秒。こともあろうに東軍のジャーメイン・オニール(当時ペイサーズ)が、右のコーナーから3点シュートを試みたブライアントに接触して反則をコールされてしまった。与えられたフリースローは3本。すべて決めれば西軍の逆転勝ちだったが、ブライアントは1本を外して試合は再延長にもつれこんだ。
結局、再延長は西軍が17―7で制して155―145で勝利。「ジョーダン、最後の球宴で劇的な決勝弾」と途中まで書いていた原稿はボツになった。「コービー、空気読めなかったかなあ~」はたぶん記者全員の総意だったはず。ただしまだレギュラーシーズンでレイカーズ対ウィザーズというカードが1試合残っていた。だから2003年の“第2戦”にジョーダンがブライアントの前で笑顔を見せて去っていく姿があると期待していた。しかしレイカーズの背番号8は、ウィザーズの背番号23を想像を超える形で見送った。そして私の予定稿は再びボツになった。「信じられんな」というボヤキとともに…。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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