IOCとの力関係に変化も “変革への一歩”進めたアスリート側からの積極的発信
2020年04月20日 09:00
五輪
一連の発言が延期の判断にどう作用したのか数値で計れるものではないが、結果的にIOCや組織委は大会の1年延期に追い込まれた。ドイツ・アスリート協会のハーバー最高責任者は「IOCと日本が延期を決めたことはアスリートが声を上げ、明快に語ったことと強い関係がある。公式にはアスリートに(IOCの意思決定への)影響力はないという状況に変わりはないが、SNSを通じて世論を形成できることは明確に証明された」と話す。
ウィッケンハイザー氏は「無神経で無責任」と批判した約24時間後にIOCから「我々と話し合うことなく意見を述べたことは残念」というメッセージを受け、プレッシャーを掛けられたというが、意に介する様子はない。「アスリートは持てる力を行使して変革を生み出せるよう立場を生かし続ける必要がある」と訴える。17年に現役を退いたとはいえ、その前からIOC委員を務めてきた同氏の“アスリート目線”の発言は、IOCが圧倒的に優位だった対アスリートとの力関係が変わり始めていることをうかがわせる。近代五輪の歴史で初となった開催延期は、変革への一歩が踏み出されたターニングポイントとして記憶されることになるかもしれない。(東 信人)