「一生に1回。迷う」日本代表リーチ主将も語っていたライオンズ戦の重み
2020年10月21日 23:28
ラグビー
ライオンズは1888年、ニュージーランドとオーストラリア遠征のために初編成。当時の日本は明治21年で、慶大にラグビーが伝わった1899年(明治32)より11年も前に誕生した歴史を持つ。1989年以降は4年に一度編成され、4年ごとにオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの順に遠征する。過去に前哨戦としてフランスやフィジー、カナダと対戦した歴史はあるが、日本との対戦は初編成から134年目にして初となる。
ライオンズを編成する4カ国の選手にとっては、4年に一度だけめぐってくるチャンス。当然、自国代表になるよりもハードルが高く、選出はラグビー選手として最大の栄誉とされる。翻って対戦国の選手にとっては、12年に一度しか対戦機会はめぐってこない。12年もの長期間、第一線で活躍しなければ2度目の対戦機会はなく、まさに「一生に一度」のチャンスと言える。
そもそもニュージーランド、オーストラリア、南アフリカのいずれかの代表資格を持たなければ、一生めぐり合えない対戦機会だが、実は“抜け穴”もある。それがライオンズが遠征中に実施する、地元クラブとの対戦だ。来年の南ア遠征でも、南ア代表との対戦は8試合中3試合のみ。その他の5試合はスーパーラグビー(SR)のブルズやストーマーズといった、クラブチームとの試合が組まれている。
「来年はライオンズとの試合がある。一生で1回しかない。正直、迷います」。4年前、こう語っていたのは、日本代表主将のリーチ・マイケル(東芝)だ。16年はW杯イングランド大会翌年で、リーチは代表招集を辞退。翌17年はライオンズのニュージーランド遠征の年で、当時トップリーグ終了後にプレーしていたSRのチーフスとの対戦も決まっていた。
チーフスの一員として、一生に一度のチャンスを取るか、あるいは19年W杯に向けて、日本代表に復帰するか。もし2年続けて代表を辞退すれば、二度と招集されないリスクも含んでいた。その後、17年2月に横浜市内で行われたイベントの際には「優先順位は日本代表」と表明。それは自ら思慮した上での答えだったのか、あるいは紆余(うよ)曲折を経た上での心変わりだったのか。いずれにしても、一時はジャパンのジャージーと天秤に掛けるほどの重みを持っていたのは間違いない。
1993年、オールブラックスの一員としてライオンズと対峙(たいじ)したジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチも「日本代表選手にとっては、まさに一生に一度の機会であり、私自身も待ちきれません」とコメントした。見方によってはW杯よりも貴重なライオンズとの対戦。日本代表の15年、19年W杯の躍進が、伝統的かつ保守的なホームユニオンを振り向かせる大きな果実となった。
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