ハーフ団だった幼なじみがプロップで日本一に―天理大・谷口と小鍛治の物語
2021年02月02日 12:15
ラグビー
「よっしゃーって感じで、気持ち良かったですね」と谷口には余韻が残る。前半は決してスクラムが優勢だったわけではない。よく崩れた。「駆け引きがめっちゃうまかった」と小鍛治は、久保、宮武、小林の相手一列を称える。谷口も「ちゃんと組めれば勝てると分かっていた」と手応えを感じながらも、豆腐を握りつぶしているかのように、力を出させてもらえなかった。だが、後半のあの場面だけは、「相手がバチっと当ててきた」と小鍛治。結果、「スクラムトライ」と表現してもいいような、強烈なプッシュを実現させた。
親友でもある2人は組んで組んで、強くなった。1年時は、Aチームの練習台。トヨタ自動車の木津悠輔ら、後にトップリーグ入りする上級生の実力者にもまれた。全く歯が立たず、小鍛治は「悔しくて泣いていました。でもあの経験が大きかった」と懐かしむ。
当時から、週2回のスクラム練習は1時間を超えることが当たり前。豊富な「量」に、岡田明久コーチの指導という「質」も加わって、先輩たちに引っ張られながら、全国有数のスクラムを築き上げてきた。決勝戦のFW8人の平均体重は、早大が102キロで、天理大は103・6キロ。数字上は大きな差はなかったものの、汗と涙を流して身につけた技術を、大事な場面で出すことができた。
それにしても、不思議な縁だ。2人は「堺ラグビースクール」で小1からチームメイト。小学校は離れているものの、親同士が仲良く、家族ぐるみでよく遊んだ。試合になれば、2人はチームの心臓。小鍛治がSH、谷口がSOでゲームをコントロールした。100キロを超える今の体重からは想像できないが、俊敏さが求められるハーフ団だった。
中、高は別々の道を歩みながらも、同じようにポジションをFWへと移していった。その間も、絶えず連絡を取り合った。再び天理大で合流したのは偶然の一致だった。
次のステージは、トップリーグになる。1日にそれぞれの所属チームが加入を発表し、谷口はリコーへ、小鍛治は東芝に進むことが公になった。仲間としてスクラムを組む場所は一つしかない。「ゆくゆくは、代表ですね」。2人が思い描く未来は同じ。ハーフ団から始まった幼なじみの楕円球物語のクライマックスは、まだ先だ。(倉世古 洋平)
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