リオ銀、陸上・飯塚 世界旅してかけっこ対決 アフリカの小国エスワティニでも教室開催
2021年02月23日 05:30
陸上
運動靴を履く子はほぼいない。現地の子供がまず買うのは、登校用の革靴。お金がなければはだしだ。革靴か、はだしという日本では考えられない格好は、スポーツが根付いていない証拠だった。持参したバトンでリレーもした。言葉は分からない。しかし、「スポーツの力を凄く感じました」と、走る楽しさを共有した。
訪問の理由は13年のユニバーシアード(ロシア)男子200メートルで知り合った友人が同国にいたからだ。シブシソ・マツェンジワ(32)は、12年ロンドン五輪出場のエスワティニ(当時はスワジランド)を代表するスプリンターながら、メーカーから用具提供すら受けていなかった。「自分は恵まれている」。人柄にもほれ、大会中にシューズを手渡した。以後、世界大会のたびに、用具類を余分にスーツケースに詰めた。
交流は続く。昨年1月、マツェンジワが来日。コロナ禍がなければ、今年も日本で合宿をする予定だった。スマホを通じて、英語で週に何度も連絡を取り合う。「あのバトンでリレーをしているよ」。スポーツ途上国にまいた“種”のその後を知り、心が躍った。
18年の陸上教室は、マツェンジワとの合宿の延長線上で実現したものだった。経由地の南アフリカ・ヨハネスブルクの日本人学校で教えた。19年12月には米シカゴの日本人学校へ足を運んだ。国内では年間20~30回、陸上教室に出向く。指導だけでなく、いつも行うのは「かけっこ対決」だ。丁寧なファンサービスを含め、交流は自身にとって「競技のパワーをもらえる」という。五輪銀メダルは可能な限り披露する。そして伝える。「次は金メダルを持ってくる」と。
高い目標は、自分自身に重圧をかけるためだ。東京五輪は200メートルと400メートルリレー代表を狙う。最近2年間は100メートルにも力を入れたことで、200メートルにつながるスタートダッシュの課題が見えてきた。この冬は太腿前部を強化。「そこが弱かったのでうまく脚が前に出なかった」。16年に出した20秒11の自己記録更新へ手応えをつかんだ。
今夏の祭典は30歳で迎える。残りの競技人生を意識する年齢だ。やりたいことがある。「陸上教室は、教えるより、一緒に走った方が子供に喜んでもらえるんです。現役バリバリの間に、競走をしたいです」。世界中でかけっこ対決を――。陸上ファンを増やす旅を続けるため、有言実行を目指す大舞台が近づいている。
◆飯塚 翔太(いいづか・しょうた)1991年(平3)6月25日生まれ、静岡県御前崎市出身の29歳。小3で競技を始め、静岡・藤枝明誠高―中大―ミズノ。10年世界ジュニア選手権200メートル優勝。12年ロンドン五輪、16年リオデジャネイロ五輪出場。日本選手権200メートルは4度優勝。100メートルも10秒08の自己記録を持つ日本を代表するスプリンター。静岡名産の緑茶を飲むことが息抜き。1メートル85、80キロ。
おすすめテーマ
2021年02月23日のニュース
特集
スポーツのランキング
-
高安 大関復帰へ稽古直訴、朝乃山相手に13勝1敗で好感触
-
朝乃山「肩に電気が走った」も前に出ること徹底し課題と収穫
-
鶴竜 相撲取らずも前向き「肌を合わせておくだけでも全然違う」
-
阿武咲「ありがたい。毎日やりたい」、鶴竜に胸を借り充実稽古
-
“反省なし”時津風親方に異論なく退職勧告処分 間垣親方が名跡変更し部屋継承
-
LAに家買えた!スケボー金候補、堀米の夢は続く 五輪初代王者で競技の「イメージ変えていける」
-
柔道女子五輪代表・芳田 初体験コロナ下海外遠征でなぜ結果出せた?ドーハ開催マスターズ大会の舞台裏
-
リオ銀、陸上・飯塚 世界旅してかけっこ対決 アフリカの小国エスワティニでも教室開催
-
全豪Vから一夜 大坂が日本のファンに感謝メッセージ「あの蝶々も喜んでくれたかな」
-
7人制ラグビー女子日本代表・永田 合宿に手応え「質高くできている」
-
橋本新会長 政治の“師”森前会長と24日業務引き継ぎへ、IOC理事会も
-
パラ陸上男子車いす、佐藤がプロ転向「記録更新して金メダルを」
-
水球の五輪1次L組み合わせ決定 男子は伊など、女子は米ロと同組