NBAサンズのポールがコロナ感染で離脱 ワクチン接種4カ月目で直面した新たな問題
2021年06月20日 11:18
バスケット
NBAでは6月9日以降に164選手の検査を実施。163選手は問題がなかったが、ポールだけは“例外”となった。地元ラジオ局(アリゾナ・スポーツ)のジョン・ガンバドーロ氏によればポールは2月にファイザー社のワクチンを接種していたと明言。ファイザー社のワクチンは変異ウイルスに対しても90%以上の有効性が確認されているが(入院しなくてすむ症状)、ガンバドーロ氏の証言が事実だとすると、接種から4カ月で陽性に転じてしまうリスクがあるということになる。もちろんそのワクチンのおかげでポールの今回の離脱は短期間で済む可能性もある。NBAだけでなくこれは世界の多くの人にとってとても貴重な情報になるのでぜひ公表してほしいと思うのだがどうだろうか…。
NBAは米国内でのワクチン接種が進んだ4月以降にアリーナへの観客動員を部分的に解禁。プレーオフでは多くのチームが「ほぼ満員」という状態になって“日常”を取り戻していた。それだけにサンズを含めて関係者には衝撃が走ったはずだ。チームの主力を感染規定で戦列から外した状態でプレーオフを行ってしまうと、どこかやりきれない気持ちになってしまうだろう。
米国ではワクチン接種が進むにつれてスポーツ観戦のファンも戻ってきている。室内競技ゆえに感染リスクの高かったNBAも今、ほぼ満員のファンを受け入れて試合を実施。ポールの具体的な状況が明らかになっていないので断定することはできないのだが、ワクチン接種は感染防止の上では「100%の武器」にはならないことを理解する必要があるのかもしれない。ファイザー社のワクチンはデルタ株などの変異ウイルスにも90%以上の有効性があると報じられていたが、それはあくまで「入院しなくてすむ程度」が最悪のシナリオ。4カ月という間隔を置くと感染のリスクがまた出てくるのであれば、経済活動の制限なしでの再開は課題と問題を抱えることになる。
東京五輪を巡ってはまだ観客を入れるか、無観客かで揺れ動いているが、北米プロスポーツ界でバイデン大統領の批判を浴びながら、真っ先に「満員運営」に踏み切った大リーグのレンジャーズ(本拠はテキサス州アーリントン)でさえ、それはワクチン接種から4カ月以上が経過した開幕時(4月)からだった。
西海岸のワシントン州シアトルに本拠を置いているマリナーズは7月2日からようやく観客動員を100%にして試合を行うが(メジャー全30球団の中の29番目)、同州の18日の新規感染者数は東京都とあまり変わらない453人。ワクチン接種完了者は対象者の49%を超えたものの、検査でのここ1週間平均の陽性率は4・9%と、下げ止まっていたこともあって、経済の“全面再開”はカリフォルニア州から15日遅れての30日からとなっている。
さて日本の政府や五輪組織委員会側からは私の記憶にある限り、最も多い死者を出した米国における経済とスポーツ界の「復興へのプロセス」を引き合いにした答弁を一度も聞いた事がない。海の向こうで起こっている事象を調査して研究して意見を聴いて判断しているのなら異論はないが、東京五輪に関して私が最も不満に思うのは、各組織のリーダーたちの視野と判断の基準がグローバルではなく、あまりにもドメスティックな部分にしか向けられていないことだ。
ワクチンを接種しても4カ月後に陽性反応が出たポールのケースをどうとらえるのか?誰でもいいので、ぜひ意見を聴いてみたいと思う。コロナに関しては誰も経験がないので「模範解答」などないのだが、日本はワクチン接種で“周回遅れ”になったことで、米スポーツ界のデータと事例を参考にして「最良の推論」を提示することは可能。国民に理解を求めるというのはそういう姿勢を示すことではないだろうか?
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった2018年の東京マラソンは4時間39分で完走。
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