秋山1539日ぶり復活白星 “弱い自分”打ち破った

2016年09月17日 07:20

野球

秋山1539日ぶり復活白星 “弱い自分”打ち破った
<神・D>4年ぶりの勝利をあげた秋山は笑顔で手をふる
セ・リーグ 阪神2-1DeNA
(9月16日 甲子園)
 4年分の悔しさを晴らす復活星だ!阪神・秋山拓巳投手(25)が16日のDeNA戦(甲子園)で12年6月30日のヤクルト戦(神宮)以来、1539日ぶりの勝利を挙げた。5回2/3を3安打1失点に抑えて24年連続勝利を狙ったDeNA・三浦に投げ勝ち、最下位脱出に貢献。敗れればクライマックスシリーズ(CS)進出が消滅する一戦で意地の投球を見せた。

 負け続けた4年間、どれだけ腕を振っても顔をのぞかせた“弱い自分”を、秋山が打ち破った。1点差の4回無死一塁。筒香を2ボール2ストライクと追い込み、5球目に選択したのは内角直球だった。意思を込めた144キロに球界屈指の長距離砲は手が出なかった。

 「攻めていく気持ちを持った。強打者に直球で勝負できたのは自信にしてもいいのかなと」

 近年はカットボールに頼る、かわす投球が目立っていた。「変革」の転機がある。6月3日の西武戦(甲子園)で2回3失点と打ち込まれ、2日後に降格を告げられた。首脳陣の1人に「打者に怖さがない。このままだったら野球人生終わるぞ」と厳しい言葉をかけられた。

 2軍で取り組んだのは右打者の内角に食い込むシュート。死球を恐れず打者の胸元を襲う新球を鳴尾浜のブルペンで投げ込むうちに、スタイルも直球主体の強気の投球に変貌した。「引きずらないよう、攻める気持ちを持った」。初回の失点に気落ちせず最速148キロの直球とシュートを武器にねじ伏せた。

 勝てなかった1500日以上に及ぶ期間は「投手人生」を懸けた苦闘の日々でもあった。三浦から2安打したようにプロ入り前は西条高のエースとしてだけでなく、高校通算48本塁打をマークした強打者としても大いに注目された。

 1年目に4勝を挙げながら2年目以降、投手として結果が出なくなると「秋山は、いつ野手に転向するんだ」という周囲の声が自然と耳に入ってきた。白球を握った小学時代からずっと背番号1を背負ってきた男が、初めてマウンドに立つことをためらっていた。

 「でも、やっぱり自分はピッチャーなんで。打者をやるくらいなら…」

 心は決まった。2軍戦、練習試合であろうと、マウンドに上がる前には必ず「この試合でメッタ打ちにされたらピッチャーの自分が終わってしまう」と何度も言い聞かせて重圧をかけてきた。

 オフに出席したイベントでは登場の瞬間に一部のファンから「こんなとこで何をやってる!しゃべる時間があるなら、練習しとけ」とヤジを飛ばされたこともあった。

 「オフにヤジられるとは思いませんでしたね。ショックですけど、仕方ない。後がないんで結果を出すしかない」

 今季最終登板となる崖っぷちのマウンドで4年分の悔しさをようやく晴らした。試合後、少しだけ目を潤ませ「勝てて良かった」とひと息つくと、表情を引き締めた。「この1回だけなんで、まだまだ何とも…」。悩み、苦しみ、もがいてつかんだ1勝をもう無駄にはしない。(遠藤 礼)

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