先頭打者で敬遠されたライアン・ハワードが…

2017年05月11日 10:00

野球

先頭打者で敬遠されたライアン・ハワードが…
ライアン・ハワード内野手 (AP) Photo By AP
 【永瀬郷太郎のGOOD LUCK!】ライアン・ハワードがマイナー契約を結んでいたブレーブスを解雇された。昨季までフィリーズ一筋でメジャー通算382本塁打を放った左のスラッガーが、である。
 強烈な印象が残っている。「ボールパークを行く」という連載企画でメジャーの各本拠地球場を渡り歩いた2006年。フィラデルフィアのシチズンズバンク・パークを訪れたのは夏の終わりだった。

 アストロズとの一戦は2―2の同点で9回裏を迎えた。先頭打者として打席に入ったのはハワード。サヨナラ弾を期待するスタンドは大いに沸いた。だが、歓声はすぐ大ブーイングに変わる。

 ア軍の捕手が立ったまま座らない。なんと走者がいないのに敬遠しているのだ。

 一発が飛び出せば試合終了。ここまで53本塁打を放っていたスラッガーを歩かせたいというのは分かる。でも、日本なら捕手は座って外角に大きく外すところだ。臆面もなく捕手が立っての敬遠には驚いた。

 バリー・ボンズがジャイアンツ時代に2点ビハインドの満塁で敬遠されたことがあるが、それに匹敵するくらいの先頭打者敬遠である。

 「初めてだと思うよ。9回の先頭バッターで、なんて…」 

 試合後、そう言って肩をすくめたハワード。この年は打率・313、58本塁打、149打点と打ちまくり、本塁打と打点の2冠王、ナ・リーグMVPに輝いた。

 シーズン終了後には日米野球で来日。6試合で5本塁打と日本のファンにもそのパワーを見せつけた。

 2008年にも48本塁打、146打点で2冠王。2009年には141打点で2年連続3度目の打点王。輝かしい活躍を続けた。

 その野球人生が暗転するのは2011年、カージナルスとのナ・リーグ地区シリーズ。ゴロを放って一塁へ駆けだした際にアキレスケンを断裂した。2013年には半月板を損傷。大きい故障が続いて輝きを失っていった。

 昨季は打率・196、25本塁打、59打点。フ軍から契約を打ち切られた。今年は開幕後の4月6日にブ軍とマイナー契約して3Aグインネットで11試合に出場。打率・184、1本塁打、5打点と振るわず、メジャーに上がれないまま解雇となった。

 まだ37歳。本人は現役続行を希望しているらしいが、手を差し伸べる球団はあるだろうか。(特別編集委員)

 ◆永瀬 郷太郎(ながせ・ごうたろう)1955年、岡山市生まれ。早大卒。80年スポニチ入社。野球記者歴36年。2006年、50歳にして初めてのメジャーリーグ取材で連載「ボールパークを行く」を担当し、全米各地を飛び回る。

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