王貞治氏 今明かした「一本足打法」の真実 756号は“不本意な一発”だった
2017年09月02日 09:00
野球
今年6月14日。巨人―ソフトバンクの交流戦が行われた東京ドーム。この日は「756号40周年企画」と銘打った記念イベントが催された。5回終了時、王がグラウンドに立ち、大型ビジョンに756号を放った瞬間の映像が映し出された。
王が荒川博打撃コーチのアドバイスを受け一本足打法に挑んだのは1962年、21歳の時だった。その経緯を王は自著「回想」(勁文社)でこう記している。「テークバックから一挙動でバットを振り下ろすべきなのに、もう一度テークバックする。この動作をヒッチという。当時の私にはこういう悪癖が身についてしまっていた。(中略)荒川さんは“お前のヒッチ癖は直りそうもない。こういうフォームではどうだ”と片足で立って素振りをして見せてくれた」
天井からつるした和紙を日本刀で切り裂くなど徹底的な研さんを重ねて完成した一本足打法。64年にはシーズン55本の日本記録(当時)を達成した。ほぼ直立の構えでテークバック時には体が反時計回りにバネのようにねじれ、マウンドからは背番号1が見えていた。だが、その一本足打法も当初チーム内で疑心暗鬼に見られていたようだ。
「川上監督の指示で64年のキャンプは二本足でスタートしたけど、自分で一本足に戻した。その後川上さんは二度、家に来られ二本足を勧めたが断りました。ボクが頑固なことは川上さんも分かっていたと思う」
一本足打法を始めてから15年での756号到達。その間、長嶋とのON砲でチームをけん引、V9の原動力となった。同時に一本足打法も変化していった。直立に近かった構えが「逆くの字」に見えることが多くなった。
「誰もが通る道だけど動体視力が衰え、体の切れ、瞬発力がなくなってくる。20代の頃と違ってくるんだよね。年を取ると人の顔が変わるように、バッティングも変わらなければいけない。打者は投手と違って受け身だからね」
球種が増え、変化球を主体とする投球パターンが全盛となっていく中での対応。理想のバッティングを追い求めながらも主砲としての結果責任があった。
「毎年、タイトルを獲らなければいけない立場とかね。まぁ、入ればいいか…というか。自分本来のバッティングとのギャップが常にありましたよ。晩年は応用編で打っていたことは確かだね」
華やかな756号フィーバーは球道のはざまで悩み、苦しんだワンカットなのかもしれない。40歳の時「自分のバッティングができなくなった」と、シーズン30本塁打でバットを置いた。
ちなみに昨シーズン、両リーグでこの数字を超えたのは筒香(D)、山田(ヤ)、ロぺス(D)、バレンティン(ヤ)、レアード(日)、メヒア(西)の6人しかいない。王がいかに異次元かつ偉大な打者であったかがここでも分かる。(敬称略)
◆王貞治の756号本塁打 1977年(昭52)9月3日のヤクルト戦(後楽園)。3回1死でフルカウントから鈴木康二朗のシュートを右翼へ40号ソロ。午後7時10分、世紀の大記録を達成した。王はベンチ前で両親に感謝の花束を手渡し、直後には長嶋茂雄監督の粋な計らいでファンの待つ右翼の守備に就いた。鈴木は「魅入られたように真ん中に入ってしまった」。756号を打たれた投手にはサイパン旅行が贈られる予定だったが、プロとしての意地から断った。王は「巡り合わせとはいえ、鈴木君には申し訳ない気持ち」とコメントした。
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