野球の言魂(コトダマ) 楽天・高梨雄平編

2018年08月25日 10:00

野球

野球の言魂(コトダマ) 楽天・高梨雄平編
<楽・オ>7回2死三塁の場面で登板、吉田正を三球三振に打ち取った高梨(撮影・篠原岳夫) Photo By スポニチ
 【君島圭介のスポーツと人間】8月21日のオリックス戦(楽天生命パーク)後の高梨雄平投手(26)の言葉にセットアッパーの本分が凝縮されていた。
 「エースに勝ちがついたのは大きかった」



 この日、高梨の出番は6―5と1点リードの7回2死三塁の場面だった。先発の則本が6回に5失点して追いつかれたが、その裏に楽天は勝ち越しに成功していた。

 7回は勝利投手の権利を持った則本が続投。1死を取ったが福田に右翼線を破られる三塁打を浴びた。だが、則本は踏ん張った。伏見から空振り三振を奪って、2死まで辿り着いた。

 ここでベンチが動いた。左打者の吉田正に対して高梨を投入。三塁走者を還せば則本の勝ちが消える痺れる場面で、楽天が誇る中継ぎ左腕はフルスイングが身上の強打者を3球三振に斬った。

 「3球三振は出来すぎだったけど抑えられてよかった」

 このピンチを切り抜けた楽天は8回は青山、9回はハーマンと継投し、1点差で逃げ切った。先発の則本から勝利の方程式へと繋いだ高梨の3球こそ、この試合のハイライトだった。

 だが、高梨が喜びを感じたのは自身の好投より、則本に白星がついたこと。チームの絶対的エースもこの試合まで5試合の登板で勝利投手になっていなかった。「エースに勝ちがついたのが大きかった」という高梨の言葉は、則本を気遣っただけではない。先発投手、とりわけエースの称号を持った投手の勝利がチームにどれだけ好影響を与えるか教えてくれた。先発投手に勝ちをつけることがセットアッパーの本分であり、達成感を得る仕事なのだ。

 社会人JX―ENEOSからドラフト9位で入団すると、1年目の昨季は中継ぎとして46試合に登板した。今季も開幕からフル稼働。大学、社会人とは違って毎日投げるプロのセットアッパーを生業としているうちに「試合数を投げるために楽して投げるようになっていた」という。

 フォームの変化を昨季までの同僚で、今季からチームの打撃投手を務める金刃憲人さんに指摘された。「サイドスローに本格転向して2年目で慣れてきた分、リリースポイントが下がっていた」。無意識に「楽して投げるようになっていた」部分を同じ左腕の金刃さんに見抜かれ、すぐに修正。「しんどいけど」とサイドの高い位置で腕を振る本来のフォームを取り戻した。そして、則本に6試合47日ぶりの勝利がもたらされた。

 先発投手を支える。そんな頼もしい高梨もまた、誰かに支えられていたのだ。(専門委員)

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