巨人・元木ヘッドコーチの覚悟“嫌われ者になる” 理想像はあの“鬼軍曹”
2019年12月26日 09:30
野球
「ソフトバンクとの日本シリーズで力の差が出た。負けないチームをつくりたい。そのためには控え選手、チーム力の底上げ。嫌われてもいいと思っている」
――求められる役割をどう捉えているか。
「ごますりとかの悪い意味ではなく、戦いの中の監督の顔色を見ないといけない。監督が今何をしたいのかを選手に、選手が思っていることを監督にパッと言う。そういう瞬時の判断ができるか」
――ヘッドコーチの理想像は。
「須藤(豊)さんの姿が頭から離れない。ただただ厳しかった。“このくそじじい、今に見てろよ”と思いながらやっていた。でも、そのおかげでうまくなった」
――秋季キャンプでは罰走など鬼軍曹ぶりを発揮した。
「ちょっと活躍して年俸が上がって勘違いしているやつがいる。“今やらないと仕事がなくなるよ、30歳過ぎてから仕事ないよ”って伝えている。3年、結果を残しているなら、何も言わない。セカンドのレギュラーはいなくてチャンスがあるのに、やらないから腹が立つ。なんで仲良くしゃべってんのって。考えられない」
――厳しい言葉は自身の経験を踏まえ、選手を思ってこそ。意見をすでに練習に反映させているのか。
「秋季キャンプのピッチャーのバントや打撃、走塁練習はお願いして入れてもらった。俺が現役のとき、斎藤(雅樹)さんや桑田(真澄)さんがしっかりやっていた。自分を助けることになるわけだからね」
――昨年、原監督からコーチ就任を打診された。
「LINEで“力を貸してくれ”といわれた。ゴルフの帰りの駐車場で携帯を見たから、最初はゴルフの誘いかなと思ったよ」
――05年以来のプロ野球の現場復帰に周囲から「あいつでいいのか」と不安視する声もあった。
「正直“うるせえな。お前らより野球知っているわ”と。監督が“思いきってやってくれ、悪かったら注意するから”と言ってくれたから、自分の思った通りにやった」
――春季キャンプでは誰よりも声を出し、原監督からMVPに選ばれた。
「チームが明るくなったと褒められて、情けねえなと。当たり前のこと。MVPは監督の“声が出てないんじゃないの”という選手への遠回しの喝だと思っている」
――ヘッドコーチを打診されたのはいつ。
「日本シリーズの4戦目の試合前。監督室に呼ばれて“来年からヘッドとしてやってほしい”と。日本シリーズ中に?と思った。俺でいいのかと思ったけれど、分かりましたと。指名されたからには、思い切ってやるしかないという気持ち」
――引退後のタレント活動やラーメン店経営でコーチ業に役立ったことは。
「時代の流れを知ることができた。厳しい人が好かれなくなってきている。現役辞めてすぐコーチになっていたら、手を出したりして問題になっていたか分からない。でも、ちゃんとやっていれば、面倒を見てくれるし注意をしてくれる人もいて、やっぱり怒ることも必要だよなと。ラーメン屋では、おいしそうに食べるお客さんもいれば、何か言いたそうなお客さんも来る。耐えていけるのは、野球を離れて得られたこと」
――選手にも時代の流れを感じるか。
「(岡本)和真が冗談で“元木さん、来年ヘッドじゃないですか”と言ってて、本当になったら“マジでヘッドじゃないですか、マジ笑える”ってLINEが来た。俺は須藤さんにそんなことできないよ(笑い)。でも今の時代、ああいうのがいていいと思う。だけど、ああ見えてめっちゃ練習しているし、何も考えてなさそうで考えている」
――現役時代から鋭い観察眼が持ち味。選手やコーチにはっきりと是非を伝えるスタイルは来季も同じ。
「肩書が変わるだけで、やることは変わらない。今年のシーズン中も“エラーばっかりしやがって、このやろう”と選手に言ってきた。ただ、他のコーチのこともあるから小さい声で言っていた。それがヘッドになって、声が大きくなるだけだよ」
≪指導術を来月熱弁≫元木ヘッドは来年1月にトークショーを開催する。18年に「カル・リプケンU12世界少年野球大会」の日本代表監督を務めた経験もあり、ジュニアからプロまでの指導実績を生かし元木流マネジメントと組織力を説く。5日に東京総合美容専門学校、11日に故郷の大阪府豊中市のアクア文化ホール、23日に札幌市のHTB創世スクエアスタジオで行われる。
◆元木 大介(もとき・だいすけ)1971年(昭46)12月30日生まれ、大阪府出身の47歳。上宮では甲子園に3度出場し、歴代2位タイの通算6本塁打。90年ドラフト1位で巨人入団。内外野を守り、隠し球や状況を読んだ打撃を評価されて当時の長嶋茂雄監督から「くせ者」と呼ばれた。05年に現役引退。通算成績は1205試合で打率・262、66本塁打、378打点。引退後は野球解説者の他、タレント、俳優としても活動した。1メートル80、82キロ。右投げ右打ち。
【取材後記】「伝える力」が元木ヘッドの大きな武器だと改めて感じた。秋季キャンプ中、野手キャプテンを務めた岡本を一度注意したという。「ランニングメニューが終わって、しんどいと言って、すねて帰って行く態度を見せたから、その日中に“キャプテンならああいう態度を見せるな”とLINEした」。周囲への悪影響を憂い、中心選手としての自覚を促した。
的確な指摘だから、相手も納得できる。ヘッド就任時に岡本がLINEでイジったのも、信頼関係が築けているからこそだ。シーズン中も選手と食事に出かけてコミュニケーションをとった元木ヘッドなら、チームの結束はさらに強くなるはずだ。(巨人担当・青森 正宣)
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