花巻東女子野球部、13人で“プレーボール” 地域活性の願いも背負い、男子のような名門へ
2020年05月03日 07:00
野球
なぜ、今創部したのか。元々岩手県内では中学で軟式野球部に所属したり、男子に交じってクラブチームで硬式でプレーする女子選手がいたが、県内の高校に女子野球部がないため、県外へ進んだり、他競技に移るケースがあった。花巻東でも過去にソフトボール部に所属しながら女子プロ野球のトライアウトを受験した選手がいたこともある。そんな現状に数年前から女子野球部創設の機運が徐々に高まり、昨年11月に正式発表した。
創部にあたってはグラウンドや指導者の確保が必須。そこで支援に立ち上がったのがトヨタ自動車東日本だ。野球部は花巻に近い金ケ崎を本拠地とし、大谷の兄、龍太も所属。女子野球は企業とのコラボなどが禁止されていないため、支援を受けることが可能となった。12年に野球部を創部し、18年に都市対抗初出場へ導いた三鬼氏を監督として派遣。同社地域共生推進グループでの勤務と両立する形で指導を始めた。男子と同じデザインでおなじみの紫のユニホームには同社のワッペンが施されている。
三鬼氏はトヨタ自動車東日本時代も13人でスタートし、全国への道を切り開いた「立ち上げのエキスパート」でもある。「創部がきっかけで全国から花巻に来てもらい卒業後もここで働いたり、暮らしてほしい。そんな地域をつくっていきたいという、携わった人たちの大きな理念がある」と話した。
創部が決まる以前に入学した2人の2年生の存在も大きかった。現在主将を務める捕手の河野瑠生(るい)は兄・幹(もとき)さんも花巻東でプレーし、13年夏の甲子園4強時のメンバーだ。遠野市の女子クラブチーム「岩手絆ヴィーナス」でプレーしていた。内野手の田口雛乃は同校の男子軟式野球部で白球を追いかけていた。河野は「女子野球部ができると聞いて、これで学校で硬式ができると思ったら凄くうれしかった」と振り返る。田口とともに、後輩らを勧誘し、今年4月には野球経験者を中心に1年生11人が入部。サッカー部や吹奏楽部出身者も加入したといい、河野は「みんな心を開いてきた。監督ともうまくやれているし、良い環境を整えていただいた。頑張っていかないと」と気を引き締めた。
現在は新型コロナウイルス感染拡大防止に努めながら、練習を行う日々。打撃練習でも男子と同じ規格の金属バットを難なく振って快音を連発する。「まだ始まったばかりだけれど、“内角はどうやって対応したらいいんですか”と聞いてきたり、できないことがあって悔しくて涙を流す子もいたりする。その気持ちが凄く大事。次の次の世代の人たちのためにも、彼女たちにかかっている」と指揮官。多くの人がその成長を見守っている。
《OBから用具&トレーナー派遣の支援》OBも早速支援に乗り出した。マリナーズの菊池は、先月13日にマネジャーの岩男恵介氏を通じて練習球10ダースや枕、マットレスを寄贈し、トレーナー2人を派遣した。OBの金沢大地、山本竜也両トレーナーが月3、4回の頻度でトレーニング指導などを行う。岩男氏は「恩返しと野球人口が増える一手になるのではと寄付させていただくに至った」と菊池の思いを代弁。「男子と女子、どちらが先に日本一の優勝旗を岩手に持って帰ってくるのか今から楽しみにしています」という本人のメッセージも届けられた。
≪東北第1号はクラーク仙台 提携する楽天が指導者派遣≫東北で初めて女子野球部が創設されたのはクラーク仙台。18年創部ながら昨春の全国大会で準優勝した。国内女子最速125キロで昨年侍ジャパン女子代表入りした右腕・小野寺が在籍。さらに今年は強豪・世田谷西シニアでプレーした左腕・網代が入学するなど今年も注目が集まる。提携する楽天からは指導者が派遣されるなど地元の支援も受けている。現在は新型コロナウイルスの影響で通常練習はできていないが、渡辺崇部長は「バスでは席を離すなど対策しながら、できる練習をやる。仙台港近くの砂浜とか素振りなどでカバーしたい」と話した。
≪競技人口は近年増加傾向、駒苫も創部≫女子野球の競技人口は近年、増加傾向にある。高校では現在全国高校女子硬式野球連盟に32校が加盟。甲子園強豪校が新たに女子硬式野球部を創部するケースも目立つ。花巻東以外にも駒大苫小牧が新たに部を創設した。
13年8月からはNPBガールズトーナメントも開催され、認知度は高まっている。全日本女子野球連盟によると19年の全国のチーム数は86。競技人口は2145人で、男子チームでプレーしたり、無所属の選手も含めると推定3426人としている。侍ジャパン女子代表もワールドカップ6連覇中。国際大会でも活躍している。
今年1月には、西武が支援するクラブチーム「埼玉西武ライオンズ・レディース」が誕生。プロ野球のチーム名を冠した女子野球チームは12球団初。高校卒業後の受け皿となるチーム不足の解消へ大きな一歩となった。
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