ユニホームから作業着へ―元楽天・井手投手の新天地は市建設課

2020年11月21日 08:30

野球

ユニホームから作業着へ―元楽天・井手投手の新天地は市建設課
古賀市の建設課で業務する元楽天の井手さん Photo By 提供写真
 戦力外通告の期間が今月2日にスタート。プロ野球でキャリアを終えた選手の進路は指導者や解説者、一般企業に就職とさまざまだ。福岡県の玄界灘に面するまち、古賀市の役所には元プロ野球選手がいる。7月から会計年度任用職員として働く井手亮太郎さん(24)は日中に建設課で汗を流し、夜は公務員試験の勉強に睡眠時間を削る日々を送る。現在の夢は正規市職員への採用だ。「野球ではいろいろな方に支えてもらった。今度は自分が恩返し。安心して住める古賀市であり続けるための力になりたい」。作業着姿に身を包む井手さんは真っすぐな目で話した。
 17年のドラフト会議で楽天は育成1位で九産大の井手投手を指名。サイドハンドから最速151キロの直球を投げ込む速球派右腕は大学1、2年時に全日本大学野球選手権で登板するなど華々しい活躍を見せていた。だが、憧れの世界へ飛び込んだ1年目に悲劇が待っていた。春季キャンプ後の練習試合で右肘を痛め3月に手術。その後の2年間は怪我の後遺症と制球難で2軍でも登板ができず19年オフに戦力外通告を受けた。「最後は投げたくなかった。キャッチボールが一番の苦痛だった…」と現役生活を振り返る。そんな苦しい状況で支えてくれた人がいた。今年引退を表明した久保裕也投手だ。戦力外も故障も経験したベテランは井手さんに優しく語りかけ、経験した全てを話した。久保との会話が練習のモチベーションだった。「自分のことも100%やって、周りにも気配りできる。初めてこんな人になりたいと思った」。井手さんの目指す社会人像はここで決まった。

 5カ月目を迎えた建設課の実務で着実な成長を見せている。「周りが良い方ばかりなので…」と謙そんするが、今では工事の設計書作成もこなす。自分のことができて、周りもサポートできるあの人のようになるために一歩ずつ階段を上る。来年の採用試験が勝負だ。今年の古賀市の採用枠は4人と難関の試験だが「自分はプロで支配下登録を勝ち取れなかった。頑張って勉強して今度こそ勝ち取りたい」。怪我に泣いた現役時代と違い、生き生きとした表情で誓った。(記者コラム・柳内 遼平)

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