日本ハム・斎藤佑樹、単独インタビュー「迷っている時間なんてありません」必ず1軍のマウンドへ
2021年01月10日 06:30
野球
![日本ハム・斎藤佑樹、単独インタビュー「迷っている時間なんてありません」必ず1軍のマウンドへ](/baseball/news/2021/01/10/jpeg/20210109s00001173413000p_view.jpg)
「野球の難しさを改めて感じた一年でした。体の状態、フォームのバランス、リズム感も含めて安定しなかった。全く思い通りにならなかったです」
――大きな理由は?
「春から違和感や張りがあったんですけど、ブルペンや試合でマウンドに上がるとアドレナリンが出て、違和感がなくなる。だからバランスの悪いフォームでも“チャンスを頂けるならアピールしたい”という思いで投げ続けていました」
――昨季の最終登板は10月16日のイースタン・リーグの巨人戦。数日後に病院で「じん帯断裂」が判明した。
「最悪でも部分断裂かと思っていたので、最初に聞いた時は頭が真っ白になりました」
―― 一時は「じん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)」も視野に入れていたが、できるだけ早い回復を目指して保存療法を選択し、昨年11月に治療をスタートさせた。
「手術すれば、ある程度は回復するかもしれないけど、トミー・ジョンはリハビリに1年以上も時間がかかる。ここ数年は何も貢献できていないのに、さらに球団を待たせることはできない、と思ったんです。今回の保存療法がうまくいけば、今季中に復帰できる可能性はあります」
――迷いや不安は?
「迷っている時間なんてありません。一日も早く全力で投げられるよう、今は目の前のリハビリから着実にやるしかない。過去に何人かのプロの投手が経験している従来の保存療法ではなく、新しい概念の治療法に挑戦しています。仮に理想的なスケジュールで回復しなくても、自分の治療した経験をケーススタディーとして次の世代の選手に伝えたりすることはできる。だから決して無駄な時間ではないと思います」
――昨年12月7日のトライアウトでは球団OBで48歳で現役復帰を目指した新庄氏が安打をマーク。NPB復帰こそかなわなかったが、全国のファンに勇気と感動を届けた。
「本当に凄いと思いました。特に印象的だったのは笑顔。自分が楽しくやることが、周りを楽しませ、野球を魅力的に見せるんだなと再確認しました」
――しかも自身と同じ背番号「1」のユニホームを着ていた。
「その部分でも感じるものはありました。自分にとっては面識がなく、テレビで見ていたスターですけど、“プロ野球選手であることは幸せなんだ”というメッセージを伝えてくれたのではないか、と思っています。改めて、今の立場にいられることへの責任と、感謝の気持ちを胸にリハビリに取り組もうと思えました」
――ファンの存在も心の支えか?
「もちろんです。ファンの方々がいなかったら、今の自分もない。今でも毎日ファンレターを頂きます。リハビリは自分との地道な戦いですが、決して一人じゃない。ファンの方々の存在に、どれだけ救われているか分かりません」
――最近で印象に残った手紙は?
「野球をやっているという高校生からもらった手紙です。“僕は斎藤選手の高校時代も大学時代も知りません。でも鎌ケ谷で1軍を目指して練習している姿を見て、僕も野球を頑張ろうと思いました”と書いてくれていた。コロナで満足に試合もできずにつらい思いをしているのに自分のことを応援してくれている。涙が出るぐらいうれしかったです」
――若い世代だけでなく、06年夏の甲子園で全国制覇した早実時代から応援しているファンも多いと思う。
「最近、娘さんが野球を始めたという女性からの手紙も印象的でした。その方は自分が甲子園で優勝した時からファンになっていただき、娘さんが生まれてからも、ずっと自分を応援してくれている。そんな姿を見て、その娘さんも自分のファンになってくれて、さらに野球を始めたようです。そんな話を知ると、落ち込んでなんていられないですよね」
――改めてプロ11年目の今季に向けて。
「応援してくれる人が一人でもいるのなら、その人を喜ばせること、そしてチャンスをくれたチームに貢献するのがプロの役割であり、責任。だからこのままでは終われない。右肘を治し、必ず1軍のマウンドに上がります」
◆斎藤 佑樹(さいとう・ゆうき)1988年(昭63)6月6日生まれ、群馬県出身の32歳。早実では高3春夏の甲子園出場。夏の決勝は駒大苫小牧との延長15回引き分け再試合の末に優勝。「ハンカチ王子」として一世を風靡(ふうび)する。早大ではリーグ6人目の通算30勝&300奪三振を達成。10年ドラフト1位で入団。11年4月17日のロッテ戦でプロ初登板初勝利。通算成績は88試合で15勝26敗、防御率4.34。1メートル76、77キロ。右投げ右打ち。
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