「どんなに苦しくても最後までやり切る」生きる全ての人々へ、人生訓教えてくれた日本ハム・斎藤佑樹

2021年10月20日 07:45

野球

「どんなに苦しくても最後までやり切る」生きる全ての人々へ、人生訓教えてくれた日本ハム・斎藤佑樹
17日、引退試合となったオリックス戦7回無死、日本ハム・斎藤の最後の投球(撮影・高橋茂夫) Photo By スポニチ
 心温まる引退セレモニーだった。10月17日。日本ハム・斎藤佑樹投手(33)が、11年のプロ野球選手生活に終止符を打った。
 斎藤が現役最後のマウンドに上がる前、札幌ドームがつかの間の静寂に包まれた。7回表が始まる前は、通常ビジターチームの応援歌が流れる。しかし、それは8回に持ち越された。先発・上沢が6回を投げ終えた時点で108球。1万3618人の観衆も交代期と読み、固唾(かたず)をのんで場内アナウンスを待っていた。数秒だったかもしれないが、あの静けさはフィナーレを際立たせる、効果的なものだった。

 そして、三塁側ベンチから背番号1が現れた。大きな拍手がわき起こった。「ファイターズのピッチャーの交代をお知らせいたします。上沢に代わりまして、斎藤佑樹。ピッチャー・斎藤佑樹!背番号1」。おなじみの登場曲「勇気100%」が流れる。引退試合のために用意されたオレンジ色の応援ボードが客席で揺れ、主役の登場に札幌ドームが沸いた。オリックス・福田に真剣勝負を挑んだ現役最後の登板は四球となった。それでも全身全霊を込めて7球を投げ終えた斎藤に温かい拍手が送られた。

 引退セレモニーでは同期入団の西川から花束を渡され「ここまでずっと走り続けてきたので、肩の荷を一回下ろして休んでください」とねぎらいの言葉をかけられた。社会現象にまでなった入団当初の斎藤フィーバーを知る西川だからこその優しい気づかいだった。栗山監督就任1年目の12年開幕戦では完投勝利。ヒーローインタビューでは「今は持っているのではなくて、背負っています」と話した。

 その名言を引用して、試合後の取材で斎藤に「背負っているものを下ろして、楽になるか?」と聞いた。「それは明日の朝、起きて感じてみます」と応えた斎藤に、続けて「今まで重かったか?」と問うと「全然重いと思って野球をやっていない。苦しい時期もありましたけど、基本的に野球ができて幸せだと思う」。根底に野球が大好きという気持ちがあるからこそ、どんなにつらい状況でもどうすれば野球がうまくなるか、ということだけを考えてプレーし続けてこられたのだと理解した。

 そして、斎藤は引退セレモニーのスピーチでこう言った。「諦めて、やめるのは簡単。どんなに苦しくても、ガムシャラに泥だらけになって最後までやり切る。栗山監督に言われ続けた言葉です。その言葉通り、どんなに格好悪くても、前だけを見てきたつもりです。ほとんど思い通りにはいきませんでしたが、やり続けたことに後悔はありません」。どんなに批判を浴びようとも前を見据えて走り続けてきた斎藤。プロ野球選手に限らず、社会の荒波にもまれながら生きる全ての人々への人生訓であったように思う。

 プロ通算成績は89試合で15勝26敗。スター選手と比較すれば平凡な数字だったかもしれない。それでも斎藤が晩年に見せた生きざまには、学ぶべきことが多いと思う。(記者コラム・東尾 洋樹)

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