巨人・桑田投手チーフコーチ G投へ守備力と制球力の向上課題「夢は投手王国」
2022年01月04日 05:30
野球
![巨人・桑田投手チーフコーチ G投へ守備力と制球力の向上課題「夢は投手王国」](/baseball/news/2022/01/04/jpeg/20220103s00001173632000p_view.webp)
「プロの世界ですから。実力のある人、結果を残した人がどんどん上がっていく。現時点では菅野に続く投手はいないし、先発ローテーションは全くの白紙。だから、どんどん若手にもチャンスを与えたいと思っていますし、将来的にはタイトルに絡むような投手を育てたいと思います。僕の夢は投手王国をつくって巨人を支えること」
――昨年はチーム防御率がリーグ1位だった20年の3・34から同じ3点台ながら同4位の3・63まで落ちた。今の投手陣には何が必要か?
「セ・リーグの投手は投げるだけじゃない。走攻守全てで勝利に貢献する。しっかり鍛えていきます」
――自身も現役時代は通算8度もゴールデングラブ賞に輝くなど、投手ながら守備への意識は高かった。
「投手は剛速球や魔球のような変化球が注目されるが、それはあくまでも手段。本来の目的はアウトを取ることです。その取り方も三振だけじゃなく、守備やけん制も含まれる。たとえ四球を出しても、けん制やバント処理でアウトを取れたら自分を助けられる。内野ゴロを打たせてゲッツーを取ればなおさらです。どんな方法でもアウトはアウトなので」
――これまで以上に“9人目の野手”という意識が重要になってくる。
「とにかく、1イニングで“3つのアウトを早く確実に取る”ということ。四球を出して落ち込むのではなく“守備でもアウトを取れるんだ”という前向きな意識を持たせてあげたい」
――リーグ3連覇を逃した昨季、数字で浮き彫りになった課題は与四死球数。リーグで2番目に多い520で、日本一となったヤクルトはリーグ最少の413だった。
「どの数字を見ても制球力が不足しているのは明確。投手陣全体で制球力を鍛えるというテーマを共有したい」
――制球力の向上に必要なことは?
「キャッチボールの時から、制球力を高めるコツをつかんでほしい。例えば遠投は“強く遠くに投げる”という練習だが、マウンドから投げる投手にとっては距離も角度も異なる。今年は、塁間で伸びのある球を構えたところに投げられるような練習をします」
――実際の投本間(18・44メートル)より長い距離だが、それはどこに生きてくるのか?
「制球力は指先の感覚と思われがちだが、実際に大切なのは下半身の大きな筋肉を含めた体全体で投げること。緊迫した公式戦のマウンドで、小手先の感覚には頼れない。体全体で投げるフォームを身につけたら疲労も軽減されて、完投も見えてきます」
――以前は135球での完投というのを唱えていた。それを目指す中で中5日というのは可能なのか?
「できます。中6日が常識になっているが、メジャーは中4日で162試合。日本は143試合。先発が5回、6回で80球程度で代わると、負担を負うのはリリーフ陣。長いシーズンを戦い抜くためにも助け合いが必要です」
――考えている運用方法は? 「基本は中5日ですね。その中で一人が5試合ぐらいは完投してくれるとリリーフ陣の疲労が相当減る。フォームと制球力を磨けば135球以内で十分に完投できると思っています」
――改めて2022年はどんなシーズンにしたいか?
「何度も言いますけど投手陣は鍛える、鍛錬ですね。これに尽きると思います。その先に優勝。そういう流れですね」
≪斎藤、槙原と3本柱形成≫桑田投手チーフコーチは巨人に21年間在籍し、エースとして活躍。完投数は118を誇る。守備への意識も強く、95年の5月には三塁線付近の小フライに飛び込み右肘を強打。じん帯断裂という大ケガを負ったが「9人目の野手」として8度のゴールデングラブ賞を獲得した。通算180勝の斎藤雅樹、同159勝の槙原寛己と先発3本柱を形成し、89年、90年と連覇をするなど7度優勝を経験。89年はチーム防御率2.56、90年は同2.83と投手王国を築いた。
≪昨季痛かった菅野離脱≫リーグ3連覇を逃した昨季はエース・菅野が故障や不振で計4度も離脱するなどして自己最少の6勝。開幕ローテーションは菅野、戸郷、今村、サンチェス、井納、高橋の6人でスタートしたが、FAで新加入の井納の不調などもあり、駒不足に悩まされた。シーズン途中に山口が加入も2勝8敗。チーム最多11勝の高橋は後半戦2勝、戸郷も1勝と勝負どころで失速した。9、10月は先発5枚で回したが、計43試合で先発白星は6試合だけだった。
≪初実戦日程遅らせる≫原監督が桑田コーチから2月の宮崎キャンプの初実戦の日程を遅らせる案を提案され、了承したことを明かした。19年は3日に紅白戦を実施するなど例年は早期に開催しているが、若手のオーバーペースによる故障防止の目的で「桑田コーチの要望。実戦が早いと、投手が抑えるという気持ちになってしまうから、もう少しじっくりと」と説明した。初実戦は9~12日の第3クール中を軸に話し合われることになりそうだ。
◇桑田 真澄(くわた・ますみ)1968年(昭43)4月1日生まれ、大阪府出身の53歳。PL学園では5季連続で甲子園出場し、1、3年夏が優勝、2年春夏が準V。甲子園通算20勝3敗。85年ドラフト1位で巨人入団。87年に沢村賞、94年にセ・リーグMVP。最優秀防御率2度、最多奪三振1度。07年はパイレーツでプレーし、08年3月に現役引退。10年に早大大学院スポーツ科学研究科を首席で修了し、13、14年に東大野球部の特別コーチを務めた。通算173勝141敗14セーブ。右投げ右打ち。
【取材後記】今回のインタビューで桑田コーチの語気が最も強まったのは「先発完投を目指す中でも中5日で回ることは可能か?」に対する答えだ。「できます」。決して根性論ではない。制球力が上がれば球数は抑えられ、投球回も増える。投手分業制が確立されている時代でも基本は変わらない。そんな思いを感じた。
投手チーフ補佐コーチとして昨年に入閣した際に掲げていた「(選手の)伴走者になる」という姿勢も変わっていない。マウンドやベンチでの声掛けは今季も継続する予定で「頭の中は誰も見えない」と対話を大事にする方針も不変。「桑田イズム」が浸透した投手陣がどんな成績を残すのか今から楽しみだ。(巨人担当・小野寺 大)
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