嫌われ者の天才はどこへ行く
2017年12月17日 12:50
格闘技
WBA世界スーパーバンタム級スーパー王者のリゴンドーは14年の大みそか、大阪で天笠尚の挑戦を受けたことで日本でも知られている。当時は超大物の来日に驚かされたが、2度ダウンを喫して打たれもろさを露呈する一方、天笠の顔面をボコボコにして棄権に追い込む実力も披露した。だが、亡命してプロ活動に転じた米国では「強いけど試合がつまらない」と嫌われ、致命的なほど人気がない。身体能力と技術は一級品でパンチ力もあるが、“ガラスのあご”を守るため“安全運転”に徹する試合ばかりで、13年のノニト・ドネア(フィリピン)戦以降はビッグマッチと無縁だった。今回、2階級上のロマチェンコに挑戦するリスクを冒したのも、久しぶりの大物との対戦と40万ドル(約4480万円)のファイトマネーが理由だったはずだ。
リゴンドーは6月、1回の終了ゴング後に放ったパンチでモイセス・フローレス(メキシコ)を倒してしまい(裁定は無効試合)、WBAから再戦を命じられていた。それでもロマチェンコ戦を選択したため、WBAのメンドサ会長は「敗れれば王座剥奪」との見解を表明。世界王座認定団体からも嫌われた形のリゴンドーは「もし俺がメイウェザーやゴロフキンだったら、こんな仕打ちはされない」と反発したものの、同会長は試合後に改めて剥奪を示唆した。
引退はせず、今後はスーパーバンタム級に戻って戦う方針というが、プロ初黒星で商品価値を下げた上に9度防衛した王座も失えば、もともと不人気の37歳はさらに試合枯れに陥ることが予想される。確かに試合は面白くないけれど、このまま才能が消えていくのも寂しい気がする。日本人の世界ランカーも多いスーパーバンタム級やフェザー級で、再び世界戦線に絡んできてほしい。(専門委員・中出 健太郎)