日本の頂――第39回チャンピオンカーニバル
2018年01月20日 10:00
格闘技
実は昨年のチャンピオンカーニバルも王者に5人、挑戦者に8人の30代がいた。だが、ライトフライ級に拳四朗(BMB、チャンピオンカーニバルは出場せず返上)、スーパーフェザー級に尾川堅一(帝拳)と後に世界王者となった選手が2人おり、フレッシュなイメージはあった。それに比べ、今年はやや地味な顔ぶれであることは否めない。世界初挑戦を狙う“若手”と言える王者はスーパーバンタム級の27歳・久我勇作(ワタナベ)、スーパーフェザー級の27歳・末吉大(帝拳)、ライト級の吉野ぐらい。世界戦を経験したフライ級の黒田雅之(川崎新田)らは日本王座から再浮上を狙う状況だ。
それでも、カード発表会見は熱かった。2度世界挑戦に失敗し、今回はミニマム級王座決定戦に出場する35歳の小野心(ワタナベ)が「タイトルというよりもぶっつぶしに行く」と過激な抱負を口にすると、各選手から「叩きつぶす」「MVPはもらう」「ベルトは自分の方が似合う」「王者の防衛と思っている周りを見返してやる」など強気なコメントが立て続けに飛び出した。フライ級で黒田に挑戦する長嶺克則(マナベ)は「黒田選手をリスペクトしているが、もういいんじゃないですか?世代交代の時が来ました」、ミドル級で7戦全勝全KO勝ちの竹迫司登(ワールドスポーツ)を迎える王者・西田光(川崎新田)は「ここらへんで判定負けを経験してもらおうと思う」と挑発。世界戦が視界にはっきり入っていない選手ほど日本王座へのこだわりが強いように思えたし、敗れれば年齢的に今後が厳しくなるアラサーが多いことも、会見に緊張感を生んでいた。
26歳の長嶺は15年3月、拳四朗にTKO負けしたのがプロ16戦で唯一の黒星。拳四朗が将来はフライ級に上げてくると予想し、「もう1回やると決めている。それが世界戦ならいい」と話す一方で、「日本タイトルマッチの格式を上げたい。日本王者がボクシングだけで生活できないようでは、プロスポーツとして子供に誇れない。日本王者になれば車に乗れる、いい家に住めるように底上げしたい」と力説した。獲ったベルトを早々と返上するなど世界への通過点と見られがちな日本王座だが、その階級の日本一を決める一戦はプロボクサーにとって1つの到達点。待遇が格段に良くなるとか、少なくともボクシングファンの間では王者の名前が浸透するとか、業界全体がステータスを上げる取り組みをすれば、さらにギラギラした戦いになるのではないか。(専門委員)
◆中出 健太郎(なかで・けんたろう)2月で51歳。スポニチ入社後はラグビー、サッカー、ボクシング、陸上、スキー、NBA、海外サッカーなどを担当。後楽園ホールのリングサイドの記者席で、飛んでくる血や水を浴びっぱなしの状態をコラムの題名とした。昨年は内山高志の引退、山中慎介の陥落、井上尚弥の米デビュー、村田諒太の戴冠と、ボクシング担当は忙しすぎた。今年はじっくり日本タイトルマッチを見たいけど、どうやら無理そうだ。