“史上最高の日本人対決”勝敗の外で後味の悪さ 残念でならない井岡のタトゥー問題

2021年01月07日 09:30

格闘技

“史上最高の日本人対決”勝敗の外で後味の悪さ 残念でならない井岡のタトゥー問題
2度目の防衛に成功した田中戦で、左腕のタトゥーが露出していたことが問題視されているWBO世界スーパーフライ級王者の井岡(右) Photo By スポニチ
 大みそかに2度目の防衛に成功したプロボクシングWBO世界スーパーフライ級王者、井岡一翔(31=Ambition)の左腕のタトゥーが試合中に露出していた問題が物議を醸している。田中恒成(25=畑中)との一戦は“史上最高の日本人対決”として注目を集め、結果は井岡の8回TKO勝利。3階級を制覇した田中を圧倒した試合内容は井岡の評価を高めたが、一方で試合中にタトゥーがあらわになっていたことを問題視した日本ボクシングコミッション(JBC)は倫理委員会に諮る方針を固めた。JBCルール、第86条(欠格事由)の項目に「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」とあり、抵触する場合は試合に出場できないと定められているためだ。
 ただし、入れ墨やタトゥーがあるボクサーの出場を全て禁じているのかと言えば、実際はそうではない。過去には外科手術などで入れ墨を消してリングに上がったボクサーもいるが、現在はファンデーションやパウダーなどで隠せば、出場を認めている。井岡も日本人男子初となる4階級制覇を達成した19年6月の試合、同12月の初防衛戦は“国内仕様”で臨み、大きな問題にはなっていなかった。だが、今回は上腕部だけだったタトゥーが左肩付近まで広がり、はっきりと視認できる状態になってしまったため、波紋が広がった。一部週刊誌が報じると、ネット上には井岡への賛否と同時に、ルールに抵触する状態のまま試合を行わせたJBCへの批判も集まった。一部には「試合中止にすべきだった」という強硬な意見も見られたが、あの状況で誰が試合中止の決断ができただろうか?

 昨年、コロナ禍でボクシング業界は大きなダメージを受けた。ジムは休業を余儀なくされ、会員数が減り、興行自粛でプロモーターとしても収入も激減。厳しい状況の中でボクシングの灯を消さないために、無観客で興行を再開。前日のPCR検査で陽性となり、世界戦が中止となったWBA世界ライトフライ級王者・京口紘人(ワタナベ)のように、直前の試合中止で莫大な損害を被った例もある。ようやく迎えた年末のビッグマッチ。待ち望んでいたファンも多かったはずだ。対戦相手の田中陣営も中止は望まなかっただろう。不快に思った人もいるだろうが、その人たちには「見ない」という選択肢もある。もちろん、井岡の行動が競技の根幹に関わるようなルール違反だったとしたらJBCは即座に中止を決断したはずだ。

 JBC関係者によると、井岡陣営に対しては前日に指導し、当日の控え室にも係員が立ち会い、ファンデーションを塗っていたことは確認済みという。それでもタトゥーが露出した状態で試合が行われたことは事実であり、JBC側もチェックの甘さは認めている。今後の対策として落ちにくい特殊なファンデーションの使用を指定することなども視野に入れているという。

 入れ墨やタトゥーの是非については、いろいろな考え方があって良いと思う。JBCルールについては議論の余地はあるかもしれないが、現状ルールとして存在する以上、意図的でなかったとしても結果としてルールを違反したなら何らかの処分があるのも仕方ないだろう。注目を集めた試合だったからこそ批判が多いことも理解できる。「世界王者だからこそルールを遵守すべきだった」という意見には共感できるが、ルール違反だから「無効試合」とか「王座剥奪」というのは批判を通り越して、ただの誹謗(ひぼう)中傷に過ぎない。内容が素晴らしい試合だっただけに、勝敗に関係ない部分で後味の悪さを残したのは残念でならない。(記者コラム・大内 辰祐)

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