“史上最高の日本人対決”勝敗の外で後味の悪さ 残念でならない井岡のタトゥー問題
2021年01月07日 09:30
格闘技
昨年、コロナ禍でボクシング業界は大きなダメージを受けた。ジムは休業を余儀なくされ、会員数が減り、興行自粛でプロモーターとしても収入も激減。厳しい状況の中でボクシングの灯を消さないために、無観客で興行を再開。前日のPCR検査で陽性となり、世界戦が中止となったWBA世界ライトフライ級王者・京口紘人(ワタナベ)のように、直前の試合中止で莫大な損害を被った例もある。ようやく迎えた年末のビッグマッチ。待ち望んでいたファンも多かったはずだ。対戦相手の田中陣営も中止は望まなかっただろう。不快に思った人もいるだろうが、その人たちには「見ない」という選択肢もある。もちろん、井岡の行動が競技の根幹に関わるようなルール違反だったとしたらJBCは即座に中止を決断したはずだ。
JBC関係者によると、井岡陣営に対しては前日に指導し、当日の控え室にも係員が立ち会い、ファンデーションを塗っていたことは確認済みという。それでもタトゥーが露出した状態で試合が行われたことは事実であり、JBC側もチェックの甘さは認めている。今後の対策として落ちにくい特殊なファンデーションの使用を指定することなども視野に入れているという。
入れ墨やタトゥーの是非については、いろいろな考え方があって良いと思う。JBCルールについては議論の余地はあるかもしれないが、現状ルールとして存在する以上、意図的でなかったとしても結果としてルールを違反したなら何らかの処分があるのも仕方ないだろう。注目を集めた試合だったからこそ批判が多いことも理解できる。「世界王者だからこそルールを遵守すべきだった」という意見には共感できるが、ルール違反だから「無効試合」とか「王座剥奪」というのは批判を通り越して、ただの誹謗(ひぼう)中傷に過ぎない。内容が素晴らしい試合だっただけに、勝敗に関係ない部分で後味の悪さを残したのは残念でならない。(記者コラム・大内 辰祐)