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住友ゴムが「タイヤ空力シミュレーション」を開発、2027年発表予定の次世代EV用タイヤでは電費性能向上への貢献を目指す

2024年02月08日 08:00

住友ゴムが「タイヤ空力シミュレーション」を開発、2027年発表予定の次世代EV用タイヤでは電費性能向上への貢献を目指す
車重による接地部分のタイヤ形状変化も含めて、結果の分析にAI技術を活用しながらタイヤの回転による空力を計算できる EVタイヤに求められる性能として、航続距離を最大化するための低電費性能の向上が重要な要素のひとつとなる。住 […]

車重による接地部分のタイヤ形状変化も含めて、結果の分析にAI技術を活用しながらタイヤの回転による空力を計算できる

シミュレーション技術を用いてタイヤ付近の気流を可視化
タイヤのパターンおよび接地部分のタイヤ形状変化も含めて回転するタイヤの空力を計算

EVタイヤに求められる性能として、航続距離を最大化するための低電費性能の向上が重要な要素のひとつとなる。住友ゴムではこれまでも様々なアプローチでタイヤの転がり抵抗低減に取り組んできたが、これに加えて、このたび開発した「タイヤ空力シミュレーション」を活用して、EVタイヤの電費性能向上において重要となる空気抵抗低減にも取り組む。

サイドウォールの文字や微細な凹凸を考慮できるサイドウォール空力シミュレーション

EVへの変化が急速に進む現在、ICE(内燃機関)車両で過半を占める熱によるエネルギーロスがEVではほとんどなくなり、空気抵抗の影響が相対的に増加する。タイヤは車体から露出しており、タイヤ付近を経由した空気は車両下部や側面にも大きくはみ出して流れるため、乗用車の空気抵抗によるエネルギーロスのうち20~25%はタイヤが関係する。熱によるエネルギーロスがほとんどないEVでは、転がり抵抗と合わせるとエネルギーロスの約34~37%がタイヤによるものとなるのだ。

車速100km/hでのICE車両とEVのエネルギーロスの比較

今回新たに開発された「タイヤ空力シミュレーション」は、タイヤ付近の空気抵抗を可視化するシミュレーション技術。実車両データを用いることや、タイヤのパターンを再現したうえで、車重による接地部分のタイヤ形状変化も含めて、結果の分析にAI技術を活用しながらタイヤの回転による空力を計算できることが特徴だ。さらにこれに加えて今回、タイヤのサイドウォールの文字や微細な凹凸がパターン同様に回転しながら変形するシミュレーション技術を開発。EVタイヤにおいてはサイドウォール部の凹凸を少なくし、空気抵抗を低減することが重要だが、今回開発されたシミュレーション技術を活用することで、デザインと空力性能をより高次元で両立させたタイヤ開発が可能となる。

実車とシミュレーションによる空気抵抗値の変化量の比較
AIによるタイヤの空気抵抗に重要な位置の可視化結果例

シミュレーションの精度を確認するために実施した実車による風洞実験結果と比較して、タイヤ後方の気流の傾向やサイドウォール部の凹凸を少なくしたEVタイヤの方が、標準タイヤよりも空気抵抗値が低くなり、その変化量も一致したことから有用性を確認。また、AIも空気抵抗が大きい時はサイドウォール部がタイヤの空気抵抗に重要な位置であると示唆しており、このAI技術の有効性も確認できた。この技術を活用することで、空力特性の最適化によるタイヤ性能向上を図り、転がり抵抗低減と合わせてEVの電費性能向上に貢献する。

同社は昨年3月に、タイヤ事業における独自のサーキュラーエコノミー構想「TOWANOWA(トワノワ)」を発表した。「TOWANOWA」はバリューチェーン上の5つのプロセスからなる「サステナブルリング」と各プロセスから収集したビッグデータを連携させる「データリング」で構成されており、ふたつのリング間でデータを共有・活用することで新たな価値提供を目指す。

今回開発されたタイヤ空力シミュレーション技術では、「企画・設計」プロセスを通じて得られたシミュレーションデータを走行時の空気抵抗を減らすことに役立て、EVの電費性能向上につなげる。

「TOWANOWA」を通じて住友ゴムは、ESG経営の推進を更に加速させ、2050年のカーボンニュートラルの実現と持続可能な社会の発展に貢献していく方針だ。

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