朗読劇「ラヴ・レターズ」25年続くワケ 現パルコ劇場最終公演
2016年08月01日 10:00
芸能
当時、パルコ劇場の公演パンフレットには、その演目とは関係なく、ニューヨークとロンドンの演劇情報が末尾に掲載されていた。その中で「ラヴ・レターズ」の記事を目にし、作品に惹かれたパルコ劇場の内藤美奈子プロデューサー(現東京芸術劇場)が、青井氏と上演権を獲得した。
当初「ラヴ・レターズ」のためだけに劇場スケジュールが確保されることはなく、隙間を縫って上演された。例えば、ある演目が1カ月公演の時、日曜昼の回が終わった後で劇場が空いている夜や休演日を使い、舞台セットなどはそのままに「ラヴ・レターズ」が行われた。
3周年の時から関わる尾形氏は「今や市民権を得た朗読劇ですが、当時は珍しく、これをやろうとした内藤さんたちは凄いと思います。最初の10年はがむしゃらで、日曜夜や休演日に無理を言って入れてもらったり、地方にもよく行きました」と振り返る。地道に上演を続けたことが実り、2000年頃から定着。「ラヴ・レターズ」のためだけに劇場スケジュールを押さえられるようになった。
長く愛される理由については「台本のよさに尽きるんじゃないでしょうか」と見解。WASP(ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント)の物語のため、日本人には分かりにくい側面もあるが「出演者がストーリーのどこに一番焦点を当てるかというと、2人の究極の愛。お客さまもそこを感じ取っていただいているからこそ、これほど長く続いているのだと思います」と分析した。
台本のよさゆえ、名だたるキャストが出演。三田和代(73)とのカップルで14回も出演した名優・細川俊之氏は「何度やっても新鮮で、やるたびに発見がある。年齢を重ねると、感じ方も変わってくる。自分が役者としてどう生きてきたのか、自分の心が役者としてどうなっているのかが分かる」と絶賛していたという。
そして、忘れてはならないのは演出・青井氏の存在。稽古は青井氏が4~5時間かけて台本の解釈を説明し、直後に本読みを1回して終了。たった1日だけだが、26年間460回の継続は並大抵のことではない。
尾形氏も「青井さんが1回も欠かさず稽古をし、本番に付き合ってくださったからこそ続いた作品。青井さんあっての『ラヴ・レターズ』です」と称賛。「あまりに外れていれば軌道修正はしますが、基本的に青井さんから役者さんに『こう読んでください』という注文はありません。読みたいように読んでください、と役者さんに任せます。ただ、読みたいように読んでもらうために、感覚だけで読むことにならないように、ストーリーの時代背景や社会情勢を4~5時間かけて解説し、基礎をつくってあげます」と青井氏の演出に感嘆する。
「26年間続いたパルコ劇場の財産で、最後を飾るにふさわしい演目。ラスト1週間、華やかにやりたいと思います」
【現パルコ劇場の最終公演「ラヴ・レターズ」公演日程&キャスト】
8月1日(月)19:00開演=TOSHI―LOW(BRAHMAN)&大空祐飛
8月2日(火)19:00開演=柄本時生&前田敦子
8月3日(水)19:00開演=箭内道彦&木村佳乃
8月4日(木)19:00開演=風間杜夫&伊藤蘭
8月5日(金)13:00開演=森崎博之(TEAM NACS) &シルビア・グラブ
8月6日(土)13:00開演=勝村政信&YOU
8月7日(日)13:00開演=渡辺謙&南果歩
【「ラヴ・レターズ」ストーリー】幼なじみのアンディーとメリッサ。自由奔放で感覚人間のメリッサ。真面目でいつも何かを書いているアンディー。思春期を迎え、2人は一番近い異性としてお互い相手を意識し始める。しかし、ついに決定的に結ばれるチャンスを迎えた夜、2人は友達以上にはなれない自分たちを発見。大学を出た2人はそれぞれ結婚し、全く別の道を歩む。アンディーは海軍を経て法曹界に入り、上院議員に。メリッサは画家になるが、行き詰まりから精神的破綻をきたす。2人は久々の再会を果たす…。
【パルコ劇場】1973年5月、西武劇場として開場。85年、現名称に改称した。ファッションビル「渋谷パルコ パート1」内にある。客席数は458。自主プロデュース劇場の先駆けとして数多くの話題作を上演。寺山修司氏、唐十郎氏(76)、蜷川幸雄氏、三谷幸喜氏(54)らが活躍した。木の実ナナ(69)と細川俊之氏主演のミュージカル「ショーガール」シリーズは大ヒット。今年11年目を迎えた落語家・立川志の輔(62)による1カ月公演は正月の風物詩になった。新劇場は2019年、跡地に建つ地上20階、地下3階の高層ビルに開館する。