「らんまん」宮澤エマ 浜辺美波との抱擁シーンで「感情が自然にあふれ出た」
2023年08月23日 08:25
芸能
「最後に寿恵子に会ってから10年くらいたっています。台本をいただいた時、こんな大きな料亭を仕切っている女将なのかと思って、ちょっとびっくりしました(笑)。みえは商売上手なので、10年の間にかなり売り上げが伸びて料亭の規模がちょっとずつ大きくなって今の地位を築いたのではないかと想像しました。女手で稼げるということを体現する人間像を寿恵子に提示する存在だと思います」
──10年後のみえを演じるに当たって心がけたことは?
「最初に登場した頃はチャキチャキした感じを意識しましたが、10年たって大きな料亭の女将になったので、少し穏やかで芯のある感じ、腰を据えている感じを意識しました。しゃべり方のテンポを少し変えました」
──2020年の「おちょやん」以来の朝ドラ出演はいかがですか?
「『おちょやん』は映像でのお芝居の転機となる大きな作品です。その後も朝ドラに何らかの形で関わりたいと思っていましたが、こんなにすぐに出させていただけるとは思っていませんでした。みえは『らんまん』のスパイスになる人物、物語を盛り上げていく人物なので責任重大だと思いました」
──約3年ぶりに朝ドラの現場に入ってどんなことを感じましたか?
「温かみのある現場だと感じました。朝ドラは長い時間を一緒に過ごすということもあって、とても家族的なところがあります。途中から入っても居づらいということがありませんでした」
──「おちょやん」の後、昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演したので、NHKでの収録に慣れているのでは?
「『おちょやん』の時は、まだ映像作品への出演が少ない頃で、収録場所が大阪のNHKさんで、しかもコロナ禍が始まったばかりだったので環境に適応することで精いっぱいでした。その後、『鎌倉殿の13人』で1年半近く出勤するかのようにNHKさんに通い詰めました。例えば、NHKさんの衣装に仕込むマイクの電源はペダルみたいなものを踏むと音が鳴って入るのですが、最初の頃は、何をしているだろう?と戸惑ったりして、周りの一つ一つの動きに振り回されているようなところがありました。今回はさすがに勝手が分かっていたので最初からお芝居に集中することができました」
──みえの姉・まつを演じる牧瀬里穂さんの印象はいかがでしたか?
「本当に感じのいい方です。最初の頃は私も凄く緊張していましたが、牧瀬さんも『緊張する』とおっしゃって、カジュアルにいろんな話をしてくださいました。まつさんの優しくおおらかで頼りがいがある半面、真っすぐで不器用さがあって商売上手ではないところが、どこか牧瀬さんご本人と重なる気がして、みえとして『お姉さん、しっかりしてよ』と言いやすい雰囲気がありました(笑)」
──まつとみえはたたずまいが対照的に見えました。
「みえは当時のキャリアウーマンなのだと思います。彼女の生き方は、まつさんが求めているものとは違います。演じる上で、まつさんの穏やかな感じに切り込むような、ピリッとさせるような芯の強さを意識しました」
──姪の寿恵子を演じる浜辺美波さんをどんな役者だと感じていますか?
「浜辺さんは、話し合わなくても、こちらが打ったものをしっかりキャッチして投げ返してくれます。ウソのない、とても素直な方なのだと思います。私は同じお芝居を何回もするのが苦手なのですが、浜辺さんはちょっとしたニュアンスの違いもちゃんと受け取って表情や返し方を変えてくれます。特に、お寿恵ちゃんと久しぶりに再会するシーンの時は、まっすぐに私の目を見てくれたので、その顔を見ていると自然に叔母として姪を思う気持ちが湧き上がってきました。あのお芝居を作れたのは浜辺さんのおかげです」
──久しぶりに再会した寿恵子を抱き寄せる場面は?
「その瞬間に肉親の体温を感じ、生きていて良かったという気持ちを共有する素晴らしいシーンでした。浜辺さんは小柄な方なので、実際に抱き寄せると、この小さな体でどうやって旦那さんと子供たちを支えてきたのだろう…という感情が自然にあふれ出ました」
──舞台でも活躍する宮澤さんがこの朝ドラで映像作品ならではの面白さを感じることはありますか?
「ちょっと口角を上げる、ちょっと眉を上げるという小さな動きだけで伝えられるのは映像ならではの魅力だと思います。ただ、映像は細かい動きでも意味を持ってしまうので、どれくらい動きをコントロールするのかというところに難しさもあります」
──細かい動きで意識しているところは?
「肩の動きや視線の送り方を意識しています。みえはいつも面白いことを探しているような人なので、いつも笑みがどこかにある感じや、芸事を続けて来た人で商売人なので、艶っぽい感じ、人当たりがいい感じが出るようにしています。くっと笑ったり、くっと眉を上げたりして粋な江戸っ子のような雰囲気を表現できればいいなと思っています」
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。