Eテレ趣味番組で「刀剣」 背景に「刀剣乱舞」人気
2023年10月04日 08:00
芸能
NHKエデュケーショナルの春日雅之チーフ・プロデューサーは「番組のテーマはいろんな制作会社と相談して決めているが、以前から『刀剣をやりたい』という声が多かった。私自身、数年前に番組とは関係なく『刀剣博物館』(東京都墨田区)を訪れた時、多くの女性が真剣に刀を見ている姿を目にして刀剣がブームになっていることは知っていた」と話す。
ブームのきっかけは2015年配信開始のプラウザゲーム「刀剣乱舞」。ゲームを基にミュージカル、舞台、アニメ、実写映画などが次々と作られ、若い女性を中心に人気を集めた。
春日氏は「最初は刀剣ブームと言っても刀剣乱舞人気だけだと思っていた。ところが、その後、うちの会社にいた女性が刀剣乱舞好きが高じて趣味で殺陣を習いに行っているという話を聞き、そんな人もいるんだと思って、それならば1回やってみようかという気持ちになった」と明かす。
番組は名刀を紹介するコーナーと武術などを体験するコーナーの二部構成。昨年10月に第1弾を放送すると、番組テキスト販売やSNSなどで反響があった。
春日氏は「テキストがかなり売れた。一部のマニアックな人に受ければいいと考えて作ったが、想像以上に刀剣女子が多いんだと思った。これまでNHKやEテレを見なかった人たちがこれを機に見てくれるようになった」と話す。
もっとも、マニアックなジャンルを扱うだけに制作には苦労もある。
制作会社「ジーズ・コーポレーション」の菊地貴大プロデューサーは「紹介する名刀は番組講師のポール・マーティンさん(日本刀研究家)に候補を挙げてもらって選んでいるが、交渉しても全く撮影に応じてくれないところもある。個人所有で、もともと展示されていない刀を紹介するのは難しい。刀はちょっと見ても分からないところに面白さがあって、現場でじっくり目視すれば見えるが、カメラで普通に撮ると全く見えなくなってしまう。ガラスケース越しに撮ることが多く、反射を避けるため、照明を外したり黒幕で覆ったり、現場でいろんなことをやっている。刀一振りに対して1時間半から2時間くらいかけて撮影している」と話す。
10月4日放送の初回に紹介される名刀は「伝正宗」。剣豪・宮本武蔵が所有したともいわれ、徳川家とのゆかりも深いとされている。武術体験コーナーは、現存する日本最古の武術流儀ともいわれる「天真正伝香取神道流」だ。
毎回の名刀コーナーは元宝塚の俳優・七海ひろきが出演。初回の「天真正伝香取神道流」を体験したのは俳優・中尾暢樹。いずれも「刀剣乱舞」シリーズに関わっており、今後もシリーズゆかりの人々が続々と登場する。
11月1日放送回の武術コーナーで、七海が薙刀を体験するのが今後の見どころの一つだ。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。