テレビ朝日 ジャニ問題検証番組 「忖度」感じた社員ら証言…報道局長が性加害報道で沈黙した理由説明

2023年11月12日 11:29

芸能

テレビ朝日 ジャニ問題検証番組 「忖度」感じた社員ら証言…報道局長が性加害報道で沈黙した理由説明
テレビ朝日 Photo By スポニチ
 テレビ朝日は12日、旧ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川元社長による性加害問題を受け、検証番組「テレビ朝日 旧ジャニーズ問題検証」を午前10時から1時間にわたって放送した。
 番組は同局の大下容子アナウンサーと小木逸平アナウンサーが進行した。同局は103人にヒアリングし、「テレビ局の沈黙や忖度」について世論調査も実施した。

 BBCや週刊文春報道、2004年に最高裁が性加害を認めたにも関わらず「テレビ朝日が報じなかったのはなぜか」を検証した。

 99年当時、同社の組織はニュースを制作する報道局とワイドショーを制作する情報局、さらに編成局が全ての番組の調整を担っていた。現在は報道局と情報局が統合されている。

 VTR出演した同局の内藤正彦報道局長は「報じるタイミングは2回あった」とし、当時の司法担当記者らの証言を公表した。

 「裁判の取材予定をあげた記憶はない」「この日付に交際判決があるという情報があればデスクにあげていた」「(文春の)連載もちゃんと見ていなかったというのもあるし、重大な人権侵害の行為であるという認識もなかった」「バリューがあるネタだとは感じなかった。週刊誌VSタレントはありがちで、普段はあまりニュースにしていない」「芸能ネタだと判断してスルーしていたのではないかと思う」「非常に責任を感じる」などという声が挙がった。

 同局長は「被害への実態の関心を持たず、ニュースとして扱うものではない決めつけや偏見があった。男性への性加害についての無知や無関心、人権意識の低さがあったことが否定できない」と自省した。

 一方で文春連載を見ていたスタッフもいたが、なぜ後追いしなかったか。「事実上あの時の体制、人数ではニュース番組でも社会部でも後追いはできない」「ワイドショーが扱うネタだと思っていた。報道局が扱うものではないと思い、議論もしていなかった」という声があった。

 同局長は「内容を把握しているスタッフはいたが、報道局でも情報局でも後追いしようという議論にはならなかった。その理由は、自分たちが扱うべきニュースと考えていなかったからです。また、実際にこの報道を追いかけようと思っても、警察も動いていない状態で独自に事実関係の裏取りを進めることの困難さが壁となり、事実関係を詰めずに報じればそれこそ名誉毀損になると考えているスタッフもいた」とした。

 ジャニーズ不祥事を一律で報じないという姿勢ではなかったが「ジャニーズが絡んでくると、いろいろな不祥事も報道幹部や編成から扱いについて細かく言われたこともある」「編成が番組に対して『きわめて慎重にやってほしい』というすごく繊細な配慮があった」「番組にタレントが多く出演していることも踏まえ、配慮が必要だという意識があったのは事実」「マイナスの取り上げ方をする場合は事前に編成への報告を求められる」「ジャニーズタレントの事件・事故を扱う時は編成担当がニュースフロアや当該部署まで来て、どのくらい扱うのか逐一確認する姿を長く見てきた」と、過分な配慮が必要だったことが明かされた。

 テレビ朝日は性加害の告発から10日後の4月22日に初めて取り上げた。社員の証言では「ジャニーズネタは編成や会社が特に気にするとの空気感が醸成されていた」という。

 カウアン・オカモト氏の告発会見は取材していたが、社の性加害取材ルールに基づき、事務所側の反応を待つということになったという。すぐ報じなかったのは「重大な性被害に関して実態解明の取材と確認作業を積み上げてこれていなかったということがあるが、編成局のやりとりを通して扱いにくい案件だという空気が積極的な確認作業を妨げていたのは忸怩たる思いです」と述べた。

 また「裁判の結果を報じていればという指摘は、当時、報道しうる立場にあったものとして極めて重く受け止め、深く反省している。忖度して報じなかったわけではないというのも、翻せばあまりに過少に評価し、報じる機会を逃してしまったということになる。非常に恥ずかしく思っております。性加害はあってはならないということは当然ですが、あらゆる人権侵害に対して、高い感度を持って日々ニュースに取り組んでいかなければならないと思っています」とした。

 10月31日の定例会見では、同局の篠塚浩社長が「再発防止特別チームが指摘した、いわゆる“マスメディアの沈黙”、さらに制作現場などでもジャニーズ事務所との関係については、総合的に検証する特別番組の放送を決定した。現在社内外のヒアリングなどを進めている」と報告していた。

 在京の民放各局は、性加害問題を受けての社内調査結果を検証番組として10月に放送。日本テレビは4日の「news every.」内で、TBSでは7日の「報道特集」で検証結果を報告し、フジテレビは21日に「週刊フジテレビ批評 特別版 旧ジャニーズ事務所創業者による性加害問題と“メディアの沈黙”」と題して特別番組を放送。テレビ東京は26日に「ジャニーズ性加害問題~検証報告と今後の対応~」を急きょ放送した。
【楽天】オススメアイテム