魔法のムードづくり 原稿も読ませる天才 二刀流写真家だった

2024年01月06日 05:20

芸能

魔法のムードづくり 原稿も読ませる天才 二刀流写真家だった
写真集「THE PEOPLE by KISHIN  篠山紀信 写真力」の表紙を飾るジョン・レノンとオノ・ヨーコ 
 98年の長野五輪前の企画写真撮影で篠山事務所を訪れたメダル候補の清水宏保氏は、地下のスタジオに続く階段横に飾られていた、代表作のジョン・レノンとオノ・ヨーコがキスしているモノクロ写真に目を奪われていた。
 ドアを開けると、スタジオには心地よいジャズが流れ、カウンターの上に置かれたいなり寿司のゆずの香りに包まれた。篠山紀信さんはムードづくりの魔法使いだった。

 落語で磨いた話術で、清水氏は篠山マジックに引き込まれていった。水着に着替え、スケート靴を履いたまま腕立て伏せを繰り返すと、胸筋が盛り上がってくる。「良いね!これで決まり」とプリントされたインスタント写真に「篠山紀信 撮」と金色のフェルトペンでサインをして清水氏に手渡した。連載の最後を締めくくったのは、スケート靴を履いて仁王立ちする、鍛え上げられた肉体の清水氏の写真だった。

 アトランタ五輪ではスポニチ特派員として筆力で原稿で読ませてくれ、長野五輪企画写真では引き出しの多さで魅せてくれた。書き手としても、撮り手としても天才的な手腕を発揮された、唯一無二の“二刀流写真家”だった。(スポニチOB、鈴木博和 元写真部長)
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