アニメ研究部 山寺宏一
山寺宏一 13年演じ続けたゾロリの魅力 失敗しても“次また頑張ればいいや”
2017年12月13日 10:00
芸能
「…ZZのひみつ」は原作30周年を記念した作品で、ストーリーは本にはないオリジナル。これまでの面白おかしい作風とは少し変わって、親子愛をテーマに描かれている。「今までこういうストーリーはなかったですね。切ないシーンもすごく多くて、見に来てくれた子供が“これ本当にゾロリなの?”と驚くかもしれません。これまでのようなドタバタがあまりない。僕はそこがすごく好きでした」。
物語の舞台は過去で、ゾロリは亡き母・ゾロリーヌが学生だった時代にタイムスリップ。「ゾロリはとにかくママのことが大好き。これまで、ことあるごとに“ママ、ママ”と言ってきたので、会えるというのは感慨深かったです」。
シリアスなシーンが多い一方で、“らしさ”も随所に見られる。「くだらないオヤジギャグがあったり、イシシとノシシのオナラもそうですし、そういうところは変わっていませんね」。共通テーマである「子供を最大限に喜ばせる」ことは不変。「今回、それが大成功したんじゃないかと思います」と自信を見せた。
長く演じてきたゾロリというキャラクターについては「いたずらの王者を目指しているくらいなので、決して正義のヒーローではないですよね。でも情には厚くて、かっこよく決める時には決める。面白いメカを作るような発想の豊かさがあって、失敗しても“次また頑張ればいいや”と切り替えが早い。他の作品の主人公にはなかなかない部分が魅力です」。次々と語る口調からは、あふれてやまない13年間の愛着が感じ取れた。
主題歌の「夢は心のつばさ」の歌唱にも参加。声優として30年以上のキャリアを持つが、意外なことに主人公と主題歌の両方を担当した作品はかいけつゾロリだけで、「主人公を演じて、主題歌を歌うなんて理想のことで、声優冥利に尽きます」。前回の劇場版主題歌で今作のオープニングテーマでもある「つぎ いってみよう!」も歌っていて、「この2曲がゾロリの全てを語っているような気がします。子供たちへのメッセージが詰まっている。今の子供たちが大人になって、詞の意味が分かる頃に“小さい時に好きだった曲ってこんな良い曲だったんだ”って思ってもらいたいです」。
テレビシリーズから映画まで、子供を楽しませながら、かいけつゾロリを一番楽しんでいるのは山寺なのかもしれない。「アニメも曲も隠れた名作が多い。なんで隠れてんだって思うんですけど(笑い)。多くの人に見ていただきたいです」。こうした楽しむ姿勢が、ゾロリというキャラクターの魅力、作品の魅力としてそのまま現れ“名作”を生み出していく――インタビュー中に見せた表情は、そう思わせてくれる最高の笑顔だった。(西向 智明)
=12月20日にインタビュー後編をアップ予定=
≪声優とタレント「境界はない」≫劇場作品などで歌手や俳優、タレントらが声優を務めることについては「僕は普段から声優中心に活動しているというだけで、この人は声優で、この人は声優じゃないという境界はないんですよね。これまで演じたことがないからこそ生まれる表現や、初々しさみたいなものが聞き手に届くということもあると思います。今回は特に夏菜子ちゃんの声がゾロリーヌという役にうまくはまっているなと思いました」と語った。
≪ゾロリの母役はももクロ百田夏菜子≫今作にはゾロリの母であるゾロリーヌ役で、「ももいろクローバーZ」の百田夏菜子(23)がゲスト出演。山寺は百田の演技について「どういう風に演じてくれるのかと楽しみだったのですが、ゾロリーヌに合った、素晴らしい声を入れていただきました」と絶賛した。
◇映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ 「いたずらの王者」を目指すキツネの主人公ゾロリと、子分であるイノシシのイシシとノシシが、修行の旅をしながら行く先々で活躍する人気シリーズの劇場版第5作。ひょんなことからタイムスリップした3人が、ゾロリの母であるゾロリーヌ、トレジャーハンターのゾロンド・ロンらと謎の怪獣に立ち向かう姿を描いた。山寺と百田が歌う主題歌「夢は心のつばさ」は11月22日にシングルCDとしてリリース。
◇山寺 宏一(やまでら・こういち) 6月17日生まれ、宮城県出身。愛称は「やまちゃん」。1986年に声優デビュー。主な出演作に「それいけ!アンパンマン」(チーズ役、カバ夫役ほか)、「ルパン三世シリーズ」(銭形警部役)など。ドナルドダックや「アラジン」のジーニー役など、ディズニー作品にも数多く出演。97年から16年まで、テレビ東京系「おはスタ」の司会を務めた。