【コラム】金子達仁
韓国戦はヤマ場じゃなかった?大岩監督
2024年04月25日 17:00
サッカー
正直、至極もっともな批判だとは思う。GKに野沢を使ったのには、わたしも心底驚いた。サッカーの世界における定石からは完全に外れた起用だったことは間違いない。
ただ、当然のことながら大岩監督には大岩監督なりの読み、計算があるはず。さすがに擁護する気にはなれないが、自分なりに、監督の思惑を推察してみよう。
ライバルとの対決に臨むにあたり、負けることを前提とする監督はいない。同時に、負けた場合のことを考えていない監督もいない。仮に、万が一、韓国に敗れた場合の傷をどれだけ小さくするかは、大岩監督も考えていたはずである。
GK小久保で負けるのと、他のGKで負けるのとでは、どちらが次のラウンドへの影響が大きいか。そう考えた場合のみ、不可解に思えた起用に一応の理由を見いだすことができる。
誤算があったとすれば、野沢の出来が明らかに良くなかったこと、さらには決勝点が彼の“かぶり”から生まれてしまったことだろうか。それでも、野沢が頼りなかった分、かえって小久保が復帰するであろうカタール戦では安心感が増すかもしれない。
なぜ松木や山本、藤田を後半途中まで温存したのか。ここ数年の韓国との対戦成績、内容から、他のメンバーでも大丈夫と見たのか。はたまた、非常に重要な一戦ではあるけれど、本当に大切なのは先の2試合、もしくは3試合と考えて、余力を残しておきたかったのか。周囲ほどにはこの試合をヤマ場とは見ていなかったのであれば、理解はできる。
もう一つ付け加えるならば、インドネシアに比べれば難しい相手であることは確実なカタールを、大岩監督はそれほど恐れてはいなかった、ということも考えられる。大事なのは、あくまでも出場権のかかる準決勝、もしくは3位決定戦。ならば、確かに死に物狂いになる必要はない。
ただ、あまりにも後味の悪い敗戦ではあった。
メンバーを入れ替えてからの日本は、低調だった前半がウソのように決定機の山を築いた。誰が出ても一定の質は担保されるという選手に対する大岩監督の信頼は美しいが、この試合に関しては、先発メンバーと交代選手の力量差は明らかだった。さらに、フィールド内で仲間に落ち着きをもたらすことのできる選手の不在は致命的だった。
2試合を終えた段階でグループ1位での勝ち抜けを決め、最後のオーストラリア戦で主力を温存したカタールは、万全に近い状態で日本戦に臨んでくるだろう。簡単な相手ではもちろんない。ただ、日本が彼らを警戒する以上に、彼らが日本を警戒していることを選手たちは覚えておいてほしい。
いずれにせよ、この段階で痺(しび)れる試合が体験できることは、長い目で見れば間違いなくプラスになる。正直なところ、わたしはまだ、楽観している。(金子達仁氏=スポーツライター)