【天皇賞】武豊、ブラック出遅れも神騎乗で盾14勝 残り2戦「勝って終わる」
2017年10月30日 05:52
競馬
「特殊な芝だったが、返し馬の感じでこなせると思った。道中の手応えも抜群。他馬が内に殺到する気配もなかったので、外に出す気はなかった。リスクはあるが、思い切って内を突いた」。ライバルが大きく回ったコーナーを、最内から最小半径でクリアすると、直線入り口で自然と先頭へ。この時点で勝負は決した。残り200メートル。進路を切り替えたサトノクラウンが内から並びかけたが、抜かせない。「クラウンの蹄音は聞こえていた。先頭に立って気を抜いたが、相手が来ればもうひと伸びする。必死だったが、冷静に対処できた」。食い下がるクラウンを“利用”する形で、最後の踏ん張りを引き出した。
14度目の天皇賞制覇を、武豊は「僕にとっても凄く大きな1勝」と表現した。演歌界のスーパースター・北島三郎の所有馬で、これまでとは異質の注目度。宝塚記念の不可解な敗戦もあり、重圧を背負っての一戦。「結果を出せてホッとしている。今日はこの馬らしい強さを見せられてよかった」と表情を緩めたのは本音だ。
数々の名馬の背中を知る名手が「普通の馬にはない体の強さがある」と評するブラック。雨中の激闘で、その強みを最大限に引き出した。コンビを組むのは残り2戦。「これだけの馬。勝って終わりたい。騎手としてできる限りのことをしたい」。日本競馬界が誇る至宝の腕が、ブラックを最高の花道へと導く。