名ミステリーで身に付けた!?菜七子の鋭い読み…その“勝負本”は
2018年09月12日 05:30
競馬
数年前に同書に出合ったという菜七子。JRAの騎手紹介ホームページでもお気に入りの一冊に挙げ、取材中もすらすらとストーリーが口をつく。「マリアビートルは一番好きな本です。結構、ページ数があるんですけど、一気に読んじゃった記憶があります。伊坂幸太郎さんの本は他にも読んでいますね」。中でもお気に入りの登場人物は、殺し屋の「蜜柑(みかん)」だ。冷静沈着な性格で、次々に不測の事態が起こる中、最善の手を打ち続けようともがく。菜七子は「蜜柑は格好いいんですよ。冷酷そうだけど、本当は優しいと思う。読んでいて、つい応援しちゃいました」と楽しそうに話した。
各章ごとに登場人物の視点が入れ替わるマリアビートル。それぞれの心情描写を通し、行動に至るまでの過程、それが現実にどう影響するかが、丁寧に描かれている。「同じことが起きていても、それぞれの人の行動が絡み合っている。この本を読んで、みんな違う考えを持って動いているんだなと思いました」。
菜七子が戦う競馬も最多18頭の複雑で激しい駆け引きの勝敗が、結果を大きく左右する。求められるのは「蜜柑」のようなクレバーさで、ライバルたちの思惑を瞬時に読み取る能力なのかもしれない。
女性騎手のJRA通算最多勝利記録を更新し、早くも自身の年間最多勝利(9日現在17勝)も塗り替えた。G1騎乗も見据える実りの秋。「最近はなかなか時間がなくて読書できていないんです。また、読んでみようかな」と同書をめくっていた菜七子。競馬漬けの毎日に癒やしを求めるお薦めの一冊。菜七子ファンならずともぜひ、手に取ってみてはいかがでしょうか。
▽大学読書人大賞 2008年に創設。日本国内の大学の文芸部、文芸サークルなどのノミネートと投票により選出。大学生に最も読んでほしい本を選ぶことを目的とした文学賞。ジャンルを問わないため純文学、外国文学からノンフィクション、ライトノベルなども含まれる。