【秋華賞】シェーン95点!春から見違えるほど変身した立ち姿
2019年10月08日 05:30
競馬
シェーングランツの姿はあの55年前の記憶をよみがえらせてくれます。今春とは見違える、華麗なる変身ぶり。桜花賞当時は尾の付け根を上げ、トモを落としながら立っていました。落ち着きを欠いた立ち姿。馬体を見ればキ甲も抜けていない。半姉のソウルスターリング(G1・2勝)と比べて心身共に幼かった。続くオークス時の立ち姿は少しおとなしくなっていましたが、キ甲は未発達のまま。桜花賞時に固く閉じていた素質のつぼみが1カ月半で少し膨らんだ程度でした。
ところが、今回は尾を自然に下げ、ハミの取り方も穏やかになっている。大人のたたずまい。馬体を見れば、キ甲が伸びている。それに伴って首差しに力強さが加わりました。腹周りも今春以上にふっくらしている。ひと夏の成長がひと目で分かる姿です。
3歳春の牝馬を人間に置き換えれば18歳の乙女。3歳秋の牝馬は22歳の淑女でしょうか。18歳で挑んだローマ五輪から東京五輪までの4年間で名花を咲かせたチャスラフスカのような変身。東京五輪ではメルボルン(56年)、ローマに続く個人総合3連覇が懸かったソ連代表ラチニナを破りました。「完成度は及ばないにせよ、チャスラフスカには柔らかさとスケールの大きさがあった」(後藤正治著「ベラ・チャスラフスカ 最も美しく」)。シェーングランツの長所も柔軟性と大きなスケールです。トモの筋肉は半姉ソウルスターリング以上に柔軟でしなやか。馬体がガチッとまとまった姉に比べて、こちらには遊びがある。よりスケールの大きな体つき。父がフランケルからディープインパクトに替わった影響です。
チャスラフスカがチェコの代表的なフィギュアスケート選手だった姉を超えたように、シェーングランツも姉を超えていくでしょう。京都競馬場を喝采で包む名花です。(NHK解説者)
◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の75歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。今春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。