“馬第一主義”で偉業達成の藤沢和師
2020年11月20日 05:30
競馬
当時、藤沢調教師はそう言って笑ってみせたが、急きょ予定を変更したのには当然、伯楽だからこその配慮があった。
「富士Sの競馬ぶりを見るとやはりスピードに勝った感じなので東京の2400メートルは長いと判断しました。幸い、疲れもないので連闘にはなるけど、距離適性の高いマイル戦に向かうことにしました」
結果、初挑戦となったこのマイルCSは2着に惜敗するのだが、一貫してマイル前後しか走らせなかった使い方は、当時としてはまだ珍しい部類だった。
他にも現在としては当たり前になっている口取り写真撮影の際、鞍を置き直さないといった行為を日本の競馬界に広めたのも藤沢調教師だった。
「競馬で一生懸命に走ってきた馬に、もう一度、騎手をまたがらせるのはかわいそう」
伯楽はそう言った。シンコウラブリイと同じ馬主のシンコウバーブという馬では、こんなことがあった。同馬が勝利した後、立ち上がるそぶりを見せた。すると、藤沢調教師は口取り写真の撮影すら行わずそのまま引き揚げさせた。「馬主さんには悪いけど馬を優先に考えた」と語ったものだが、コロナ禍で一部のレース以外は写真撮影をしていない現在、馬にとっては意外と良いことなのかもしれない。
藤沢調教師が今週末のマイルCSに送り込むグランアレグリアに注目したい。
(フリーライター)