【AJC杯】柴田善、サンアップルトンで狙う最年長重賞V!骨折乗り越えて先週復帰後初白星
2021年01月22日 05:30
競馬
櫓(ろ)三年に棹(さお)八年という。舟の櫓は3年で操作できるが、棹を自在に扱うには8年でも足りない。転じて、匠の技を身につけるには長い歳月がかかるとの意味。「我ながら下手くそ。どうしてここで動かなかったのかと…」。左足骨折を乗り越え、先週16日の中京で約2カ月ぶりに復帰した柴田善。棹の代わりにステッキを握って36年になるJRA最古参でもブランク明け初日はレース感覚が戻り切らなかった。だが、翌17日の中山10Rで復帰後初V。「何頭か乗って感覚はほぼ100%つかめた。(左足骨折で)歩様は悪いけど馬に乗れば大丈夫」。無観客の中山で匠の技を見せると、足を引きずりながら引き揚げてきた。
孫もいる54歳が第一線で活躍できる秘けつとは…。「なんだろうね?不老長寿の秘湯?そんなのがあったら紹介してよ」と笑うが、飽くなき向上心があればこそだろう。全休日、趣味の海釣りに出掛けても、リールの動かし方や竿を持つ時のバランスが騎乗に応用できないか考える。棹八年の匠の境地である。
「スタートが上手だし、どんな状況でも冷静。若手のがむしゃらさがない代わりに、馬の上で常に冷静に判断できるベテランの良さがある」。勝負の一番で柴田善を起用する大江原師はこう語る。最年長JRA重賞勝利記録を持つ岡部幸雄元騎手は「馬に負担をかけないよう尻をつかずに奇麗に乗る。あの姿勢は楽じゃないけど、馬は傷まない。60歳、70歳まで頑張れと言いたい」とエールを送る。
「何歳まで続けるつもりか?60歳、いや70歳くらいかな(笑い)。孫がテレビで競馬中継を見てジイジと言っているみたいだし、頑張らないとね(笑い)」。竿をステッキに持ち替えて匠の技を披露する大ベテラン。オカベ超えのレジェンド記録は通過点なのかもしれない。
◆柴田 善臣(しばた・よしとみ)1966年(昭41)7月30日生まれ、青森県出身の54歳。85年3月に騎手デビュー。93年安田記念(ヤマニンゼファー)でG1初制覇。JRA通算2万1355戦2295勝(うち重賞95勝、障害2勝、21日現在)。G1は9勝で、直近は14年安田記念(ジャスタウェイ)。1メートル64、53キロ。血液型A。