【アネモネS】震災から10年…二本松市出身・田辺を背にカイトゲニー開く桜の扉
2021年03月11日 05:30
競馬
「助けてください」。福島県内最大の透析施設を備える白河病院には震災で閉鎖に追い込まれた東北各県の病院から透析患者が運び込まれてくる。「私の病院は岩盤の上に立っているので震災の被害を免れたんです」。他の疾病を含めて300人近くの被災患者を24時間態勢で受け入れるため、本田理事長は職員らと2週間病院に泊まり込み、陣頭指揮に当たった。同病院にはスタッフのために託児所が併設されている。愛馬の冠名「カイト」はその保育施設でスクスクと育つ海叶(かいと)君という幼児にあやかった。
「中学時代、芝でもダートでも懸命に走ったタケシバオー(69年春の天皇賞馬)を中山で見て、競馬が大好きになりました。時代を経ても競走馬がひたむきに走る姿は心を癒やしてくれます」。馬好きが高じて馬主になってから16年目。震災後の3年は競馬から離れざるを得なかったが、再び手にした愛馬が挑むクラシックロード。その手綱は被災地へ思いを寄せる福島県二本松市出身の田辺に託される。
「せっかちな気性だから焦らさずにレースを進めたい」とは1週前追い切りに騎乗した田辺。「しっかりした体幹とスピードが持ち味。前走は出遅れましたが、中間ゲート練習をしています」と和田雄師。報告を受けた本田理事長はひたむきに走る愛馬の姿を胸にしまってコロナ対策にも追われる医療現場へ向かった。震災やコロナ禍と闘う医師の心も癒やすのが競走馬だ。