アーモンドアイを歴史的名牝へ導いた国枝師の知恵と経験
2022年07月08日 05:00
競馬
1000勝の中にはアパパネで制した牝馬3冠など、数々のG1もあるが、何といっても代表馬といえるのはアーモンドアイだろう。伯楽が育てた2頭目の牝馬3冠馬は、その後、ジャパンC(2度)や天皇賞・秋など、G1レースを次々と制覇。今回の1000勝には含まれていない海の向こう、ドバイでもドバイターフ(G1)を優勝し、JRA所属馬としては史上初めて芝の平地G1を9勝もしてみせた。
同馬の全盛期、国枝師に話を伺うと、笑いながら次のように言っていた。
「これくらいのレベルの馬になると、調教師なんて関係ないですよ。それなりに仕上げてあげれば、あとは勝手に走っちゃう。能力の絶対値が違いますから」
あながち大げさではないかもしれないこの言葉だが、もちろん額面通りに受け止めてはいけない。アーモンドアイにも装鞍所で異常にイレ込んだり、爪を傷めたりと、それなりのピンチは幾度となくあった。しかし、伯楽の知恵や経験が正しいジャッジを下した。
イレ込みに対してはメンコを余計にかぶせて対処した。爪に関しては急きょ、坂路へ入れることで対応した。そうやって正しい方向へ、軌道を修正できたことがG1最多勝記録へとつながった。そして、そういったことの積み重ねが1000勝達成という大記録へとつながったのだ。
そういえばアーモンドアイが日本の競馬場を闊歩(かっぽ)していた頃、欧州ではエネイブル、オーストラリアではウィンクスと競馬史に名を残す名牝が世界中で活躍していた。実際に同じ土俵に上がることはなかったが、国枝師は当時、次のように語っていた。
「エネイブルと戦ったらどちらが勝つだろう?とか、ウィンクスならどうだろう?とか、空想させてくれるだけで凄い馬だし、ありがたいですよね」
1000勝調教師は今後もまた、ワクワクと空想できる馬を育ててくれることだろう。期待したい。 (フリーライター)