【有馬記念】イクイノックス100点 サンタの力こぶ 驚きのトモ進化
2022年12月20日 05:29
競馬
秋の天皇賞時にはキ甲(首と背中の間の膨らみ)が発達していました。キ甲とは馬の背丈(体高)の頂点にあたる部位。ダービーから3歳のひと夏を越して背が伸びたのです。キ甲は首、肩と連動しているのでその発達に合わせて首差しが一層よく抜け、肩の筋肉も厚みを増していました。だが、トモだけは首、肩に比べて物足りなく映ったのです。
その成長遅れのトモもクリスマスに合わせるように発達した。腱が浮き出た丈夫な四肢。加減せずに鍛え抜いた結果、サンタが担ぐプレゼントの詰まった袋のようにトモも膨らみました。そのトモには持久力を生む柔らかい筋肉と瞬発力を生み出す強い筋肉がバランス良く同居しています。スタミナと切れ味を兼備した一級の馬体です。
毛ヅヤの輝きも1頭だけ抜けている。青鹿毛の被毛が放つのは漆黒の光沢。最愛の人へのクリスマスプレゼントで知られるブラックダイヤのネックレス(値は張ります)のように内側からにじみ出てくる深い輝きです。腹袋にはサンタの袋に負けないほどボリュームがある。全くへこんでいない腹袋が天皇賞・秋の反動なしと伝えてくれます。
立ち姿には前走時以上に余裕がある。瞳の奥に静かな闘志を宿しながら、ゆったりとハミを受けています。G1ホースの貫禄でしょう。心身とも非の打ちどころがない。秋の天皇賞時の馬体診断では95点にとどめましたが、今度はもちろん100点満点です。
来年はもっと良くなる。体が固まっておらず、全体のつくりに余裕がある。伸びしろをたっぷり残した馬体です。サンタの魔法で急成長するトナカイの枝角のように伸びゆくスーパーホースです。 (NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の78歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。