【米・G1ケンタッキーダービー】浅沼廣幸オーナー デルマソトガケで米国でも金星つかむ!日本馬初快挙へ
2023年05月03日 05:30
競馬
「“外掛け”の馬名にふさわしい競馬をして米国へ渡りました。UAEダービーなんてG1ホース相手に大金星ですよ。今の3歳世代の馬名には相撲の決まり手を付けてみたのですが、逃げという逆転技で強い相手を破ってくれました」
――勝算は?
「果たして米国でも外掛けが通用するのか…。素人の私にはよく分からないのですが、音無先生はやれるんじゃないかと思っているみたいですよ。ドバイで走る前に音無先生と“ここで1、2着に入ってケンタッキーダービーの出走権(出走ポイント)を獲れたら米国に渡りましょうか”って話をしていました」
――それにしてもUAEダービーは強かった。逃げて6馬身突き放した。
「あの勝ちっぷりには驚かされました。スタートがあまり良くない馬。スタートダッシュで少し後れを取ると覚悟していたのに、いきなりハナを切っちゃった。ルメールさんの判断でした。直線ではドゥラエレーデ(昨年のG1ホープフルS優勝馬)がどこで負かしに来るのかと思って、ヒヤヒヤしながらスタンドで観戦していましたが、逆にうちのが引き離した。馬上でルメールさんが後ろを振り返っていた姿に勝利を確信できました。横綱を見事に外掛けで破ってくれました」
――オーナーから見たソトガケの一番の魅力は?
「専門的なことは分からないが、バテないところですかね。音無先生から距離は延びた方がいいと聞いていましたが、UAEダービーの1900メートル戦に替わって本領を発揮してくれた感じです。それまでのマイル戦では追走も大変だったみたいでした。全日本2歳優駿もわずかな差(頭差)でしか勝てなかったから」
――21年セレクトセール1歳馬セリで1980万円。気に入ったところは?
「馬体を見たって何も分からないですが、栗毛馬が好きなんです。ソトガケは栗毛だし、品のある馬に映りました。毛色なんて能力には関係ないですが…。これまでいろいろなセールで専門家の皆さんに教えてもらいながら買ってきましたが、いい結果がなかなか出ません。それなら自分のインスピレーションで買っちゃおうと。毛色に加えて、顔の表情も良かった。私にはキリッとしているように見えました」
――素晴らしいインスピレーション!勝てば日本調教馬として初。日本人オーナーとしては00年の優勝馬フサイチペガサスを所有した関口房朗氏以来。
「まさかケンタッキーダービーに出られるとは。夢のまた夢ですよね。一生に一度のチャンスだから出られるなら出してみたいと音無先生にも希望していましたが、まんまとその通りになった。日本ダービーにも自分の馬を出せたことがないので手順が前後しました(笑い)。何かに引き寄せられたような感じです。米国でも外掛けの大金星を期待して、私もこれから現地に向かいます」
《現3歳は“相撲の決まり手”、「デルマ」は「皮膚科」》浅沼オーナーは北海道千歳市に浅沼皮膚科医院などを開業した皮膚科の医師。冠名の「デルマ」はドイツ語(Derma=皮膚の)で、医療用語で「皮膚科」を意味する。馬名は一世代ごとに一つのテーマに沿って付けており、ダイコク(大黒)、エビス(恵比須)など日本の神様、ヌラリヒョン、カマイタチの妖怪などがシリーズ化されている。現3歳世代について浅沼オーナーは「勝負にこだわって相撲の決まり手で統一しました。実はウチガケという馬もいまして、高知競馬でデビュー3連勝しています」という。
▽外掛け 相撲の決まり手の一つで、相手の足の外側に自分の足を掛けて倒す技。69連勝中の大横綱・双葉山に平幕・安芸ノ海が外掛けを決めて番狂わせを演じた。強敵を破る時の逆転技として知られる。
◇浅沼 廣幸(あさぬま・ひろゆき)1950年(昭25)10月5日生まれ、北海道札幌市出身の72歳。北大医学部卒。83年に浅沼皮膚科医院(千歳市)を開業。12のクリニックなどで構成する医療法人「社団・廣仁会」の理事長を務めた。馬主歴は33年。運営するファニーヒルファーム(日高町)の生産馬を含めて毎年10~20頭の競走馬を所有している。JRA重賞はまだ勝っていないが、デルマルーヴル、デルマソトガケで地方交流重賞3勝、海外重賞1勝。